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第27章 (第1/3页)
我々の口づけはそういうタイプの口づけだった。しかしもちろんあらゆる口づけがそうであるように、ある種の危険がまったく含まれていないというわけではなかった。
最初に口を開いたのは緑だった。彼女は僕の手をそっととった。そしてなんだか言いにくそうに自分につきあっている人がいるのだと言った。それはなんとなくわかってると僕は言った。
「あなたには好きな女の子いるの?」
「いるよ」
「でも日曜日はいつも暇なのね?」
「とても複雑なんだ」と僕は言った。
そして僕は初秋の午後の束の間の魔力がもうどこかに消え去っていることを知った。
五時に僕はアルバイトに行くからと言って緑の家を出た。一緒に外にでて軽く食事しないかと誘ってみたが、電話がかかってくるかもしれないからと、彼女は断った。
「一日中家の中にいて電話を待ってなきゃいけないなんて本当に嫌よね。一人きりでいるとね、身体がすこしずつ腐っていくような気がするのよ。だんだん腐って溶けて最後には緑色のとろっとした液体だけになってね、地底に吸いこまれていくの。そしてあとには服だけが残るの。そんな気がするわね、一日じっと待ってると」
「もしまた電話待ちするようなことがあったら一緒につきあうよ。昼ごはんつきで」と僕は言った。
「いいわよ。ちゃんと食後の火事も用意しておくから」と緑は言った。
*
翌日の「演劇史Ⅱ」の講義に緑は姿を見せなかった。講義が終わると学生食堂に入って一人で冷たくてまずいランチを食べ、それから日なたに座ってまわりの風景を眺めた。すぐとなりでは女子学生が二人でとても長いたち話をつづけていた。一人は赤ん坊でも抱くみたいに大事そうにテニス?ラケットを胸に抱え、もう一人は本を何冊かとレナード?バーンスタインのLPを待っていた。ふたりともきれいな子で、ひどく楽しそうに話をしていた。クラブ?ハウスの方からは誰かがベースの音階練習をしている音が聞こえてきた。ところどころに四、五人の学生のグループがいて、彼らは何やかやについて好き勝手ない件を表明したり笑ったりどなったりしていた。駐車場にはスケートボードで遊んでいる連中がいた。革かばんを抱えた教授がスケートボードをよけるようにしてそこを横切っていた。中庭ではヘルメットをかぶった女子学生が地面にかがみこむようにして米帝のアジア侵略がどうしたこうしたという立て看板を書いていた。いつもながらの大学
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