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第69章 (第1/3页)
そこでドアが開いて料理が運ばれてきた。永沢さんの前には鴨のローストが運ばれ、僕とハツミさんの前には鱸の皿が置かれた。皿には温野菜が盛られ、ソースがかけられた。そして給仕人が引き下がり、我々はまた三人きりになった。永沢さんは鴨をナイフで切ってうまそうに食べ、ウィスキーを飲んだ。
僕はホウレン草を食べてみた。ハツミさんは料理には手をつけなかった。
「あのね、ワタナベ君、どんな事情があるかは知らないけれど、そういう種類のことはあなたには向いてないし、ふさわしくないと思うんだけれど、どうかしら?」とハツミさんは言った。彼女はテーブルの上に手を置いて、じっと僕の顔を見ていた。
「そうですね」と僕は言った。「自分でもときどきそう思います」
「じゃあ、どうしてやめないの?」
「ときどき温もりが欲しくなるんです」と僕は正直に言った。「そういう肌のぬくもりのようなものがないと、ときどきたまらなく淋しくなるんです」
「要約するとこういうことだと思うんだ」永沢さんが口をはさんだ。「ワタナベには好きな女の子がいるんだけれどある事情があってやれない。だからセックスはセックスと割り切って他で処理するわけだよ。それでかまわないじゃないか。話としてはまともだよ。部屋にこもってずっとマスターベーションやってるわけにもいかないだろう?」
「でも彼女のことが本当に好きなら我慢できるんじゃないかしら、ワタナベ君?」
「そうかもしれないですね」と言って僕はクリーム?ソースのかかった鱸の身を口に運んだ。
「君には男の性欲というものが理解できないんだ」と永沢さんがハツミさんに言った。「たとえば俺は君と三年つきあっていて、しかもそのあいだにけっこう他の女と寝てきた。でも俺はその女たちのことなんて何も覚えてないよ。名前も知らない、顔も覚えない。誰とも一度しか寝ない。会って、やって、別れる。それだけよ。それのどこがいけない?」
「私が我慢できないのはあなたのそういう傲慢さなのよ」とハツミさんは静かに言った。「他の女の人と寝る寝ないの問題じゃないの。私これまであなたの女遊びのことで真剣に怒ったこと一度もないでしょう?」
「あんなの女遊びとも言えないよ。ただのゲームだ。誰も傷つかない」と永沢さんは言った。
「私は傷ついてる」とハツミさん言った。「どうして私だけじゃ足りないの?」
永沢さんはしばらく黙ってウィスキーのグラスを振っていた。「足りないわけ
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