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第85章

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    第85章 (第1/3页)

普段はべつになんということもないのですが、ときどき感情がひどく不安定になることがあって、そういうときには彼女から目を離すことはできません。何が起るかわからないからです。激しい幻聴があり、直子は全てを閉ざして自分の中にもぐりこんでしまいます。

    だから私も直子はしばらく適切な施設に入ってそこで治療を受けるのがいちばん良いだろうと考えています。残念ですが、仕方ありません。前もあなたに言ったように、気長にやるのがいちばんです。希望を捨てず、絡みあった糸をひとつひとつほぐしていくのです。事態がどれほど絶望的に見えても、どこかに必ず糸口はあります。まわりが暗ければ、しばらくじっとして目がその暗闇に慣れるのを待つしかありません。

    この手紙があなたのところに着く頃には直子はもうそちらの病院に移っているはずです。連絡が後手後手にまわって申し分けないと思いますが、いろんなことがばたばたと決まってしまったのです。新しい病院はしっかりとした良い病院です。良い医者もいます。住所を下に書いておきますので、手紙をそちらに書いてやって下さい。彼女についての情報は私の方にも入ってきますから、何かあったら知らせるようにします。良いニュースが書けるといいですね。あなたも辛いでしょうけれど頑張りなさいね。直子がいなくてもときどきでいいから私に手紙を下さい。さようなら」

    *

    その春僕はずいぶん沢山の手紙を書いた。直子に週一度手紙を書き、レイコさんにも手紙を書き、緑にも何通か書いた。大学の教室で手紙を書き、家の机に向って膝に「かもめ」をのせながら書き、休憩時間にイタリア料理店のテーブルに向って書いた。まるで手紙を書くことで、バラバラに崩れてしまいそうな生活をようやくつなぎとめているみたいだった。

    君と話ができなかったせいで、僕はとても辛くて淋しい四月と五月を送った、と僕は緑への手紙に書いた。これほど辛くて淋しい春を体験したのははじめてのことだし、これだったら二月が三回つづいた方がずっとましだ。今更君にこんなことをいっても始まらないとは思うけれど、新しいヘア?スタイルはとてもよく君に似合っている。とても可愛い。今イタリア料理店でアルバイトしていて、コックからおいしいスパゲティーの作り方を習った。そのうちに君に食べさせてあげたい。

    僕は毎日大学に通って、週に二回か三回イタリア料理店でアルバイトをし、伊東と本や音楽の話をし、彼からボリス?ヴィアンを何冊か借りて読み、手紙を書き、「かもめ」と遊び、スパゲティーを作り、庭の手入れをし、直子のことを考えながらマスタペーションをし、沢山の映画を見た。

    緑が僕に話し

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