第96章 (第2/3页)
とがき
僕は原則的に小説にあとがきをつけることを好まないが、おそらくこの小説はそれを必要とするだろうと思う。
まず第一に、この小説は五年ほど前に僕が書いた『螢』という短篇小説(『螢?納屋を焼く?その他の短編』に収録されている)が軸になっている。僕はこの短篇をベースにして四百字詰三百枚くらいのさらりとした恋愛小説を書いてみたいとずっと考えていて、『世界の終わりとハードボイルド?ワンダーランド』の次の長篇にとりかかる前のいわば気分転換にやってみようというくらいの軽い気持でとりかかったのだが、結果的には九百枚に近い、あまり「軽い」とは言い難い小説になってしまった。たぶんこの小説は僕が思っていた以上に書かれることを求めていたのだろうと思う。
第二に、この小説はきわめて個人的な小説である。『世界の終り……』が自伝的であるというのと同じ意味あいで、F?スコット?フィッツジェラルドの『夜はやさし』と『グレート?ギャツビイ』が僕にとって個人的な小説であるというのと同じ意味あいで、個人的な小説である。たぶんそれはある種のセンティメントの問題であろう。僕という人間が好まれたり好まれなかったりするように、この小説もやはり好まれたり好まれなかったりするだろうと思う。僕としてはこの作品が僕という人間の質を凌駕して存続することを希望するだ
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