第2章 (第3/3页)
なことに、1階にあり、しかも通りは目の前だった。そして境といえば、低い、生垣があるだけだったから、トットちゃんは、簡単に、通りを歩いてる人と、話ができるわけだったのだ。さて、通りかかったチンドン屋さんは、呼ばれたから教室の下まで来る。するとトットちゃんは、うれしそうに、クラス中の皆に呼びかけた。「来たわよー」。勉強してたクラス中の子供は、全員、その声で窓のところに、詰め掛けて、口々に叫ぶ。「チンドン屋さーん」。すると、トットちゃんは、チンドン屋さんに頼む。「ねえ、ちょっとだけで、やってみて?」学校のそばを通る時は、音をおさえめにしているチンドン屋さんも、せっかくの頼みだからというので盛大に始める。クラスネットや鉦や太鼓や、三味線で。その間、先生がどうしてるか、といえば、一段落つくまで、ひとり教壇で、ジーっと待ってるしかない。(この一曲が終わるまでの辛抱なんだから)と自分に言い聞かせながら。 さて、一曲終わると、チンドン屋さんは去って行き、生徒たちは、それぞれの席に戻る。ところが、驚いたことに、トットちゃんは、窓のところから動かない。「どうして、まだ、そこにいるのですか?」という先生の問いに、トットちゃんは、大真面目に答えた。「だって、また違うチンドン屋さんが来たら、お話しなきゃならないし。それから、さっきのチンドン屋さんが、また、戻ってきたら、大変だからです。」 「これじゃ、授業にならない、ということが、おわかりでしょう?」話してるうちに、先生は、かなり感情的なってきて、ママに言った。ママは、(なるほど、これでは先生も、お困りだわ)と思いかけた。とたん、先生は、また一段と大きな声で、こういった。「それに……」ママはびっくりしながらも、情けない思い出先生に聞いた。「まだ、あるんでございましょうか……」先生は、すぐいった。「“まだ”というように、数えられるくらいなら、こうやって、やめていただきたい、とお願いはしません!!」それから先生は、少し息を静めて、ママの顔を見て言った。「昨日のことですが、例によって、窓のところに立っているので、またチンドン屋だと思って授業をしておりましたら、これが、また大きな声で、いきなり、「何してるの?」と、誰かに、何かを聞いているんですね。相手は、私のほうから見えませんので、誰だろう、と思っておりますと、また大きな声で、「ねえ、何をしてるの?」って。それも、今度は、通りにでなく、上のほうに向かって聞いてるんです。私も気になりまして、相手の返事が聞こえるかした、と耳を澄ましてみましたが、返事がないんです。お嬢さんは、それでも、さかんに、「ねえ、何してるの?」を続けるので、授業にもさしさわりがあるので、窓のところに行って、お嬢さんの話しかけてる相手が誰なのか、見てみようと思いました。