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第16章

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    第16章 (第3/3页)

、高橋君の身長が、このまま止まってしまう、とわかっていた。高橋君は、トットちゃんが、じーっと見ているのに気がつくと、両手を前後に振りながら、もっと急いだ。そしてドアのところに着くと、「君は早いな」といった。それから、「僕、大阪から来たんだ」といった。「大阪?」トットちゃんは、とても大きな声で、聞き返した。だって、トットちゃんにとって、大阪は、幻の町、まだ見たことのない町だったんだ。というのは、ママの弟で、大学生になる叔父さんは、トットちゃんの家に来ると、トットちゃんの両方の耳のあたりを両手で挟むと、そのままの形で、トットちゃんの体を高く持ち上げて、「大阪見物させてやる。大阪は見えるかい?」と聞くのだった。これは、小さい子と遊んでくれる大人が、よくやるいたずらだったけど、トットちゃんは本気にしたから、顔の皮が、全部、上のほうに伸びて、目もつりあがって、耳も少し痛かったけど、必死にキョロキョロして遠くを見た。いつも大阪は見えなかった。でも、いつかは、見えるのかと思って、その叔父さんが来ると、「大阪見物させて?させて?」と頼んだ。だから、トットちゃんにとって、大阪は、見たことのない、憧れの町なのだった。そこから来た高橋君! 「大阪の話、して?」トットちゃんはいった。高橋君は、嬉しそうに笑った。「大阪の話か……」歯切れのいい、大人っぽい声だった。その時、始業のベルが鳴った。「残念!」と、トットちゃんは、いった。高橋君は、ランドセルにかくれて、見えないくらいの小さい体をゆすりながら、元気に、一番前の席に座った。トットちゃんは、急いで隣に座った。こういうとき、この学校の自由席制度は、ありがたかった。だってトットちゃんは、(離れちゃうのが惜しい)そんな気持ちだったのだから。こうして高橋君も仲間になった。

    学校からの帰り道、家の近くまで来たとき、トットちゃんは、道路のはじのほうに、いい物を見つけた。それは、大きい砂の山だった。(海でもないのに砂があるなんて!こんな夢みたいな話って、あるかしら?)すっかり嬉しくなったトットちゃんは、一回、ポン!と高くとびあがってはずみをつけると、それからは、全速力で駆けて行って、その砂の山のてっぺんに、ポン!!と、飛び乗った。ところが、砂の山と思ったのは間違いで、中は、すっかり練った、ねずみ色の壁土だったから、「ズボッ!」という音と同時に、ランドセルに草履袋という形のまま、トットちゃんは、そのネチャネチャの中に銅像のように、胸までつかってしまった。出ようと思っても、もがくと、足のしたがツルツルにすべって、靴が脱げそうになるし、気をつけないと、頭までネチャネチャの中に、埋まってしまう危険もあった。だから、トットちゃんは、左手の草履袋もネチャネチャの中に入れたまま、ずーっと立っていた。
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