第27章 (第3/3页)
に行ったが、二人は男友だちと待ちあわせていた。それでも僕らはしばらく四人で親しく話をしていたのだが、待ちあわせの相手が来ると二人はそちらにいってしまった。
店を変えようといって永沢さんは僕をもう一軒のバーにつれていった。少し奥まったところにある小さな店で、大方の客はもうできあがって騒いでいた。奥のテーブルに三人組の女の子がいたので、我々はそこに入って五人で話をした。雰囲気は悪くなかった。みんなけっこう良い気分になっていた。しかし店を変えて少し飲まないかと誘うと、女の子たちは私たちもうそろそろ帰らなくちゃ門限があるんだもの、と言った。三人ともどこかの女子大の寮暮らしだったのだ。まったくついてない一日だった。そのあとも店を変えてみたが駄目だった。どういうわけか女の子が寄りついてくるという気配がまるでないのだ。
十一時半になって今日は駄目だなと永沢さんはが言った。
「悪かったな、ひっぱりまわしちゃって」と彼は言った。
「かまいませんよ、僕は。永沢さんにもこういう日があるんだというのがわかっただけでも楽しかったですよ」と僕は言った。
「年に一回くらいあるんだ、こういうの」と彼は言った。
正直な話し、僕はもうセックスなんてどうだっていいやという気分になっていた。土曜日の新宿の夜の喧騒の中を三時間半もうろうろして、性欲やらアルコールやらのいりまじったわけのわからないエネルギーを眺めているうちに、僕自身の性欲なんてとるに足らない卑小なものであるように思えてきたのだ。
「これからどうするの、ワタナベ?」と永沢さんが僕に訊いた。
「オールナイトの映画でも観ますよ。しばらく映画なんて観てないから」
「じゃあ俺はハツミのところに行くよ。いいかな?」
「いけないわけがないでしょう?」と僕は笑って言った。
「もしよかったら泊まらせてくれる女の子の一人くらい紹介してやれるけど、どうだ?」
「いや、映画みたいですね、今日は」
「悪かったな。いつか埋め合わせするよ」と彼は言った。そして人混みの中に消えていった。僕はハンバーガー?スタンドに入ってチーズ?バーカーを食べ、熱いコーヒーを飲んで酔いをさましてから近くの二番館で『卒業』を観た。それほど面白い映画とも思えなかったけれど、他にやることもないので、そのままもう一度くりかえしてその映画を観た。そして映画館を出て午前四時感のひやりとした新宿の町を考えごとをしながらあてもなくぶらぶらと歩いた。