第28章 (第2/3页)
いろいろとまあ事情があって」
「家に帰って二人でお酒飲むしかないんじゃないかな」
「でも私、朝の⑦時半ごろの電車で長野にいっちゃうんです。」
「じゃあ自動販売機でお酒買って、そのへんに座って飲むしか手はないみたいですね」
申しわけないが一緒につきあってくれないかと彼女は言った。女の子二人でそんなことできないから、と。僕はこの当時の新宿の町でいろいろと奇妙な体験をしたけれど、朝の五時二十分に知らない女の子に酒を飲もうと誘われたのはこれが初めてだった。断るのも面倒だったし、まあ暇でもあったから僕は近くの自動販売機で日本酒を何本かとつまみを適当に買い、彼女たちと一緒にそれを抱えて西口の原っぱに行き、そこで即座の宴会のようなものを開いた。
話を聞くと二人は同じ旅行代理店につとめていた。どちらも今年短大を出て勤めはじめたばかりで、仲良くしだった。小柄な方の女の子には恋人がいて一年ほど感じよくつきあっていたのだが、最近になって彼が他の女と寝ていることがわかって、それで彼女はひどく落ちこんでいた。それが大まかな話だった。大柄な方の女の子は今日はお兄さんの結婚式があって昨日の夕方には長野の実家に帰ることになっていたのだが、友だちにつきあって一晩新宿でよるあかしし、日曜日の朝いちばんの特急で戻ることにしたのだ。
「でもさ、どうして彼が他の人と寝てることがわかったの?」と僕は小柄な子に訊いてみた。
小柄な方の女の子は日本酒をちびちびと飲みながら足もとの雑草をむしっていた。「彼の部屋のドアを開けたら、目の前でやってたんだもの、そんなのわかるもわかからないもないでしょう」
「いつの話、それ?」
「おとといの夜」
「ふうん」と僕は言った。「ドアは鍵があいてたわけ?」
「そう」
「どうして鍵を閉めなかったんだろう」と僕は言った。
「知らないわよ、そんなこと。知るわけがないでしょう」
「でもそういうの本当にショックだと思わない?ひどいでしょう?彼女の気持ちはどうなるのよ?」とひとのよさそうな大柄の女の子が言った。
「なんとも言えないけど、一度よく話しあってみた方がいいよね。許す許さないの問題になると思うけど、あとは」と僕は言った。
「誰にも私の気持ちなんかわからないわよ」と小柄な女の子があいかわらずぷちぷちと草をむしりながら吐き捨てるように言った。
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