第33章 (第2/3页)
「それで直子はよくなっているんですか?」
「そうね、私たちはそう考えてるわ。最初のうちはかなり混乱していたし、私たちもどうなるのかなとちょっと心配していたんだけれど、今は落ち着いているし、しゃべり方もずいぶんましになってきたし、自分の言いたいことも表現できるようになってきたし……まあ良い方に向っていることはたしかね。でもね、あの子はもっと早く治療を受けるべきだったのよ。彼女の場合、そのキズキ君っていうボーイ?フレンドが死んだ時点から既に症状が出始めていたのよ。そしてそのことは家族もわかっていたはずだし彼女自身にもわかっていたはずなのよ。家庭的な背景もあるし……」
「家庭的な背景?」と僕は驚いて訊きかえした。
「あら、あなたそれ知らなかったんだっけ?」とレイコさんが余計に驚いて言った。
僕は黙って首を振った。
「じゃあそれは直子から直接聞きなさい。その方が良いから。あの子もあなたにはいろんなこと正直に話そうという気になってるし」レイコさんはまたスプーンでコーヒーをかきまわし、ひとくち飲んだ。「それからこれは規則で決ってることだから最初に言っておいた方が良いと思うんだけれど、あなたと直子が二人っきりになることは禁じられているの。これはルールなの。部外者が面会の相手と二人っきりになることはできないの。だから常にそこにはブザーバーが――現実的には私になるわけだけど――つきそってなきゃいけないわけ。気の毒だと思うけれど我慢してもらうしかないわね。いいかしら?」
「いいですよ」と僕は笑って言った。
「でも遠慮しないで二人で何話してもいいわよ、私がとなりにいることは気にしないで。私はあなたと直子のあいだのことはだいたい全部知ってるもの」
「全部?」
「だいたい全部よ」と彼女は言った。「だって私たちグループ?セッションやるのよ。だから私たち大抵のこと知ってるわよ。それに私と直子は二人で何もかも話しあってるもの。ここにはそんな沢山秘密ってないのよ」
僕はコーヒーを飲みながらレイコさんの顔を見た。「東京にいるとき僕は直子に対してやったことが本当に正しかったことなのかどうか。それについてずっと考えてきたんだけれど、今でもまだわからないんです」
「それは私にもわからないわよ」とレイコさんは言った。「直子にもわからないしね。それはあなたたち二人がよく話しあってこれから決めることなのよ。そうでしょう?たとえ何が起ったにせよ、それを良い方向に進めていくことはできるわよ。お互いを理解しあえればね。その出来事
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