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第41章

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    第41章 (第1/3页)

でも嬉しかったわ。またピアノが弾けるんだわって思ってね。そういう風にピアノを弾いていると、自分がどれほど音楽が好きだったかっていうのがもうひしひしとわかるのよ。そして自分がどれほどそれに飢えていたかっていうこともね。でも素晴らしいことよ、自分自身のために音楽が演奏できるということはね。

    さっきも言ったように私は四つのときからピアノを弾いてきたわけだけれど、考えてみたら自分自身のためにピアノを弾いたことなんてただの一度もなかったのよ。テストをパスするためとか、課題曲だからとか人を感心させるためだとか、そんなためばかりにピアノを弾きつづけてきたのよ。もちろんそういうのは大事なことではあるのよ、ひとつの楽器をマスターするためにはね。でもある年齢をすぎたら人は自分のために音楽を演奏しなくてはならないのよ。音楽というのはそういうものなのよ。そして私はエリート?コースからドロップ?アウトして三十一か三十二になってやっとそれを悟ることができたのよ。子供を幼稚園にやって、家事はさっさと早くかたづけて、それから一時間か二時間自分の好きの曲を弾いたの。そこまでは何も問題はなかったわ。ないでしょう?」

    僕は肯いた。

    「ところがある日顔だけ知ってて道で会うとあいさつくらいの間柄の奥さんが私を訪ねてきて、実は娘があなたにピアノを習いたがってるんだけど教えて頂くわけにはいかないだろうかっていうの。近所っていってもけっこう離れてるから、私はその娘さんのことは知らなかったんだけれど、その奥さんの話によるとその子は私の家の前を通ってよく私のピアノを聴いてすごく感動したんだっていうの。そして私の顔も知っていて憧れているっていうのね。その子は中学二年生でこれまで何度かは先生についてピアノを習っていたんだけれど、どうもいろんな理由でうまくいかなくて、それで今は誰にもついていないってことなの。

    私は断ったわ。私は何年もブランクがあるし、まったくの初心者ならともかく何年もレッスンを受けた人を途中から教えるのは無理ですって言ってね。だいいち子供の世話が忙しくてできませんって。それに、これはもちろん相手には言わなかったけれど、しょっちゅう先生を変える子って誰がやってもまず無理なのよ。でもその奥さんは一度でいいから娘に会うだけでも会ってやってくれって言うの、まあけっこう押しの強い人で断ると面倒臭そうだったし、まあ会いたいっていうのをはねつけるわけにもいかないし、会うだけでいいんならかまいませんけどって言ったわ。三日後にその子は一人でやってきたの。天使みたいにきれいな子だったわ。もうなにしろね、本当にすきとおるようにきれいなの。あんなきれいな女の子を見たのは、あとに

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