第41章 (第2/3页)
も先にもあれがはじめてよ。髪がすったばかりの墨みたいに黒く長くて、手足がすらっと細くて、目が輝いていて、唇は今つくったばかりっていった具合に小さくて柔らかそうなの。私、最初みたとき口きけなかったわよ、しばらく。それくらい綺麗なの。その子がうちの応接間のソファーに座っていると、まるで違う部屋みたいにゴージャスに見えるのよね。じっと見ているとすごく眩しくね、こう目を細めたくなっちゃうの。そんな子だったわ。今でもはっきりと目に浮かぶわね」
レイコさんは本当にその女の子の顔を思い浮かべるようにしばらく目を細めていた。
「コーヒーを飲みながら私たち一時間くらいお話したの。いろんなことをね。音楽のこととか学校のこととか。見るからに頭の良い子だったわ。話の要領もいいし、意見もきちっとして鋭いし、相手をひきつける天賦の才があるのよ。怖いくらいにね。でおその怖さがいったい何なのか、そのときの私にはよくかわらなかったわ。ただなんとなく怖いくらいに目から鼻に抜けるようなところがあるなと思っただけよ。でもね、その子を前に話をしているとだんだん正常な判断がなくなってくるの。つまりあまりにも相手が若くて美しいんで、それに圧倒されちゃって、自分がはるかに劣った不細工な人間みたいに思えてきて、そして彼女に対して否定的な思いがふと浮んだとしても、そういうのってきっとねじくれた汚い考えじゃないかっていう気がしちゃうわけ」
彼女は何度か首を振った。
「もし私があの子くらいで綺麗で頭良かったら。私ならもっとまともな人間になるわね。あれくらい頭がよくて美しいのに、それ以上の何が欲しいっていうのよ?あれほどみんなに大事にされているっていうのに、どうして自分より劣った弱いものをいじめたり踏みつけたりしなくちゃいけないのよ?だってそんなことしなくちゃいけない理由なんて何もないでしょう?」
「何かひどいことをされたんですか?」
「まあ順番に話していくとね、その子は病的な嘘つきだったのよ。あれはもう完全な病気よね。なんでもかんでも話を作っちゃうわけ。そして話しているあいだは自分でもそれを本当だと思いこんじゃうわけ。そしてその話のつじつまを合わせるために周辺の物事をどんどん作り変えていっちゃうの。でも普通ならあれ、変だな、おかしいな、と思うところでも、その子は頭の回転がおそろしく速いから、人の先に回ってどんどん手をくわえていくし、だから相手は全然気づかないのよ。それが嘘であることにね。だいたいそんなきれいな子がなんでもないつまらないことで嘘をつくなんて事誰も思わないの。私だってそうだったわ。私、その子のつくり話半年間山ほど聞
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