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第49章

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一人で片づけちゃうの。怒ることもないし、不機嫌になることもないの。本当よこれ。誇張じゃなくて。女の人って、たとえば生理になったりするとムシャクシャして人にあたったりするでしょ、多かれ少なかれ。そういうのもないの。彼女の場合は不機嫌になるかわりに沈みこんでしまうの。二ヶ月か三ヶ月に一度くらいそういうのが来て、二日くらいずっと自分の部屋に籠って寝てるの。学校も休んで、物も殆んど食べないで。部屋を暗くして、何もしないでボオッとしてるの。でも不機嫌というじゃないのよ。私が学校から戻ると部屋に呼んで、隣りに座らせて、私のその日いちにちのことを聞くの。たいした話じゃないのよ。友だちと何をして遊んだとか、先生がこう言ったとか、テストの成績がどうだったとか、そんな話よ。そしてそういうのを熱心に聞いて感想を言ったり、忠告を与えたりしてくれるの。でも私がいなくなると――たとえばお友だちと遊ぶに行ったり、バレエのレッスンに出かけたりすると――また一人でボオッとしてるの。そして二日くらい経つとそれがバタッと自然になおって元気に学校に行くの。そういうのが、そうねえ、四年くらいつづいたんじゃないかしら。はじめのうちは両親も気にしてお医者に相談していたらしいんだけれど、なにしろ二日たてばケロッとしちゃうわけでしょ、だからまあ放っておけばそのうちなんとかなるだろうって思うようになったのね。頭の良いしっかりした子だしってね。

    でもお姉さんが死んだあとで、私、両親の話を立ち聞きしたことあるの。ずっと前に死んじゃった父の弟の話。その人もすごく頭がよかったんだけれど、十七から二十一まで四年間家の中に閉じこもって、結局ある日突然外に出てって電車にとびこんじゃったんだって。それでお父さんこういったのよ。『やはり血筋なのかなあ、俺の方の』って」

    直子は話しながら無意識に指先ですすきの穂をほぐし、風にちらせていた。全部ほぐしてしまうと、彼女はそれをひもみたいにぐるぐると指に巻きつけた。

    「お姉さんが死んでるのを見つけたのは私なの」と直子はつづけた。「小学校六年生の秋よ。十一月。雨が降って、どんより暗い一日だったわ。そのときお姉さんは高校三年生だったわ。私がピアノのレッスンから戻ってくると六時半で、お母さんが夕食の支度していて、もうごはんだからお姉さん呼んできてって言ったの。私は二階に上って、お姉さんの部屋のドアをノックしてごはんよってどなったの。でもね、返事がなくて、しんとしてるの。寝ちゃったのかしらと思ってね。でもお姉さんは寝てなかったわ。窓辺に立って、首を少しこう斜めに曲げて、外をじっと眺めていたの。まるで考えごとをしてるみたいに。部屋は暗くて、電灯もついてなくて、何もかもぼんやりとしか見えな

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