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第58章

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    「そう」と緑は言った。「固くて大きいから」

    緑は少し酔払っていて階段を一段踏み外して、我々はあやうく下まで転げおちそうになった。店の外に出ると空をうすく覆っていた雲が晴れて、夕暮に近い太陽が街にやさしく光を注いでいた。僕と緑はそんな街をしばらくぶらぶらと歩いた。緑は木のぼりがしたいといったが、新宿にはあいにくそんな木はなかったし、新宿御苑はもう閉まる時間だった。

    「残念だわ、私木のぼり大好きなのに」と緑は言った。

    緑と二人でウィンドウ?ジョッピングをしながら歩いていると、さっきまでに比べて街の光景はそれほど不自然には感じられなくなってきた。

    「君に会ったおかけで少しこの世界に馴染んだような気がするな」と僕は言った。

    緑は立ちどまってじっと僕の目をのぞきこんだ。「本当だ。目の焦点もずいぶんしっかりしてきたみたい。ねえ、私とつきあってるとけっこ良いことあるでしょ?」

    「たしかに」と僕は言った。

    五時半になると緑は食事の仕度があるのでそろそろ家に帰ると言った。僕はバスに乗って寮に戻ると言った。そして僕は彼女を新宿駅まで送り、そこで別れた。

    「ねえ今私が何やりたいかわかる?」と別れ際に緑が僕に訪ねた。

    「見当もつかないよ、君の考えることは」と僕は言った。

    「あなたと二人で海賊につかまって裸にされて、体を向いあわせにぴったりとかさねあわせたまま紐でぐるぐる巻きにされちゃうの」

    「なんでそんなことするの?」

    「変質的な海賊なのよ、それ」

    「君の方がよほど変質的みたいだけどな」と僕は言った。

    「そして一時間後には海には放り込んでやるから、それまでその格好でたっぷり楽しんでなっって船倉に置き去りにされるの」

    「それで?」

    「私たち一時間たっぷり楽しむの。ころころ転がったり、体よじったりして」

    「それが君のいちばんやりたいことなの?」

    「そう」

    「やれやれ」と僕は首を振った。

    日曜日の朝の九時半に緑は僕を迎えに来た。僕は目がさめたばかりでまだ顔も洗っていなかった。誰かが僕の部屋をどんどん叩いて、おいワタナベ、女が来てるぞ!とどなったので玄関に下りてみると緑が信じられないくらい短いジーンズのスカートをはいてロビーの椅子に座って脚を組み、

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