第58章 (第2/3页)
あくびをしていた。朝食を食べに行く連中がとおりがけにみんな彼女のすらりとのびた脚をじろじろと眺めていった。彼女の脚はたしかにとても綺麗だった。
「早すぎたかしら、私?」と緑は言った。「ワタナベ君、今起きたばかりみたいじゃない」
「これから顔を洗って髭を剃ってくるから十五分くらい待ってくれる?」と僕は言った。
「待つのはいいけど、さっきからみんな私の脚をじろじろみてるわよ」
「あたりまえじゃないか。男子寮にそんな短いスカートはいてくるだもの。見るにきまってるよ、みんな」
「でも大丈夫よ。今日のはすごく可愛い下着だから。ピンクので素敵なレース飾りがついてるの。ひらひらっと」
「そういうのが余計にいけないんだよ」と僕はため息をついて言った。そして部屋に戻ってなるべく急いで顔を洗い、髭を剃った。そしてブルーのボタン?ダウン?シャツの上にグレーのツイードの上着を着て下に降り、緑を寮の門の外に連れ出した。冷や汗が出た。
「ねっ、ここにいる人たちがみんなマスターベーションしてるわけ?シコシコって?」と緑は寮の建物を見上げながら言った。
「たぶんね」
「男の人って女の子のことを考えながらあれやるわけ?」
「まあそうだろね」と僕は言った。「株式相場とか動詞の活用とかスエズ運河のことを考えながらマスターベーションする男はまあいないだろうね。まあだいたいは女の子のこと考えてやるじゃないかな」
「スエズ運河」
「たとえば、だよ」
「つまり特定の女の子のことを考えるのね?」
「あのね、そういうのは君の恋人に訊けばいいんじゃないの?」と僕は言った。「どうして僕が日曜日の朝から君にいちいちそういうことを説明しなきゃならないんだよ?」
「私ただ知りたいのよ」と緑は言った。「それに彼にこんなこと訊いたらすごく怒るのよ。女はそんなのいちいち訊くもんじゃないだって」
「まあまともな考えだね」
「でも知りたいのよ、私。これは純粋な好奇心なのよ。ねえ、マスターべーションするとき特定の女の子のこと考えるの?」
「考えるよ。少くとも僕はね。他人のことまではよくわからないけれど」と僕はあきらめて答えた。
「ワタナベ君は私のこと考えてやったことある?正直に答えてよ、怒らないから」
「やったことないよ、正直な話」と
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