返回

第62章

首页
关灯
护眼
字:
上一页 回目录 下一页 进书架
    第62章 (第2/3页)

緑はおいしそうに全部食べてしまった。

    「ワタナベ君、あまりおなかすいてないの?」と緑が熱いお茶をすすりながら言った。

    「うん、あまりね」と僕は言った。

    「病院のせいよ」と緑はぐるりを見まわしながら言った。「馴れない人はみんなそうなの。匂い、音、どんよりとした空気、病人の顔、緊張感、荷立ち、失望、苦痛、疲労――そういうもののせいなのよ。そういうものが胃をしめつけて人の食欲をなくさせるのよ。でも馴れちゃえばそんなのどうってことないのよ。それにごはんしっかり食べておかなきゃ看病なんてとてもできないわよ。本当よ。私おじいさん、おばあさん、お母さん、お父さんと四人看病してきたからよく知ってるのよ。何かあって次のごはんが食べられないことだってあるんだから。だから食べられるときにきちんと食べておかなきゃ駄目なのよ」

    「君の言ってることはわかるよ」と僕は言った。

    「親戚の人が見舞いに来てくれて一緒にここでごはん食べるでしょ、するとみんなやはり半分くらい残すのよ、あなたと同じように。でね、私がぺロッと食べちゃうと『ミドリちゃんは元気でいいわねえ。あたしなんかもう胸いっぱいでごはん食べられないわよ』って言うの。でもね、看病してるのはこの私なのよ。冗談じゃないわよ。他の人はたまに来て同情するだけじゃない。ウンコの世話したり痰をとったり体拭いてあげたりするのはこの私なのよ。同情するでけでウンコがかたづくんなら、私みんなの五十倍くらい同情しちゃうわよ。それなのに私がごはん全部食べるとみんな私のことを非難がましい目で見て『ミドリちゃんは元気でいいわねえ』だもの。みんなは私のことを荷車引いてるロバか何かみたいに思ってるのかしら。いい年をした人たちなのにどうしてみんな世の中のしくみってものがわかんないかしら、あの人たち?口でなんてなんとでも言えるのよ。大事なのはウンコをかたづけるかかたづけないかなのよ。私だって傷つくことはあるのよ。私だってヘトヘトになることはあるのよ。私だって泣きたくなることあるのよ。なおる見こみもないのに医者がよってたかって頭切って開いていじくりまわして、それを何度もくりかえし、くりかえすたびに悪くなって、頭がだんだんおかしくなっていって、そういうの目の前でずっと見ててごらんなさいよ、たまらないわよ、そんなの。おまけに貯えはだんだん乏しくなってくるし、私だってあと三年半大学に通えるかどうかもわかんないし、お姉さんだってこんな状態じゃ結婚式だってあげられないし」

    「君は週に何日くらいここに来てるの?」と僕は訊いてみた。

    「四日くらいね」と緑は言った。「ここは一応完全看護がたてまえ

    (本章未完,请点击下一页继续阅读)
上一页 回目录 下一页 存书签