第6章 (第2/3页)
この「海のものと山のもの」って、何か、といえば、それは、校長先生が考えた、お弁当のおかずのことだった。普通なら、お弁当のおかずについて、「子供が好き嫌いをしないように、工夫してください」とか、「栄養が、片寄らないようにお願いします」とか、言うところだけど、校長先生はひとこと、 「海のものと山のものを持たせてください」と、子供たちの家の人に、頼んだ、というわけだった。 山は……例えば、お野菜とか、お肉とか(お肉は山で取れるってわけじゃないけど、大きく分けると、牛とか豚とかニワトリとかは、陸に住んでいるのだから、山のほうに入るって考え)、海は、お魚とか、佃煮とか。この二種類を、必ずお弁当のおかずに入れてほしい、というのだった。(こんなに簡単に、必要なことを表現できる大人は、校長先生のほかには、そういない)とトットちゃんのママは、ひどく感心していた。しかも、ママにとっても、海と山とに、分けてもらっただけで、おかずを考えるのが、とても面倒なことじゃなく思えてきたから、不思議だった。それに校長先生は、海と山といっても、“無理しないこと”“贅沢しないこと”といってくださったから、山は“キンピラゴボウと玉子焼”で海は“おかか”という風でよかったし、もっと簡単な海と山を例にすれば、“お海苔と梅干”でよかったのだ。 そして子供たちは、トットちゃんが始めてみたときに、とっても、うらやましく思ったように、お弁当の時間に、校長先生が、自分たちのお弁当箱の中をのぞいて、「海のものと、山のものは、あるかい?」と、ひとりずつ確かめてくださるのが、嬉しかったし、それから、自分たちも、どれが海で、どれが山かを発見するのも、ものすごいスリルだった。でも、たまには、母親が忙しかったり、あれこれ手が回らなくて、山だけだったり、海だけという子もいた。そういう時は、どうなるのか、といえば、その子は心配しないでいいのだった。なぜなら、お弁当の中をのぞいて歩く校長先生の後ろから、白い、割烹前掛けをかけた、校長先生の奥さんが、両手に、おなべをひとつずつ持って、ついて歩いていた。そして先生がどっちか足りないこの前で、「海!」というと、奥さんは、海のおなべから、ちくわの煮たのを、二個くらい、お弁当箱のふたに、乗せてくださったし、先生が、\ 「山!」といえば、もう片方の、山のおなべから、おいもの煮ころがしが、飛び出す、という風だったから。こんなわけだったので、どの子供たちも「ちくわが嫌い」なんて、そんなことは、言わなかったし、(誰のおかずが上等で、誰のおかずが、いつも、みっともない)なんて思わなくて、海と山とが揃った、ということが、嬉しくて、お互いに笑いあったり、叫んだりするのだった。トットちゃんにも、やっと「海のものと山のもの」が、なんだか分かった。阻止寺、(マ
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