第6章 (第3/3页)
マが、今朝、大急行で作ってくれたお弁当は、大丈夫かな?)と少し心配になった。でも、ふたを取ったとき、トットちゃんが、「わあーい」といいそうになって、口お押さえたくらい、それは、それは、ステキなお弁当だった。黄色のいり卵、グリンピース、茶色のデンブ、ピンク色の、タラコをパラパラに炒ったの、そんな、いろんな色が、お花畑みたいな模様になっていたのだもの。校長先生は、トットちゃんのを、のぞきこむと、「きれいだね」といった。トットちゃんは、嬉しくなって、「ママは、とっても、おかず上手なの」といった。校長先生は、「そうかい」といってから、茶色のデンブをさして、トットちゃんに、「これは、海かい?山かい?」と聞いた、トットちゃんは、デンブを、ジーっと見て、「これは、どっちだろう」と考えた。(色からすると、山みたいだけど、だって、土みたいな色だからさ。でも……わかんない)そう思ったので、「わかりません」と答えた。すると、校長先生は、大きな声で、「デンブは、海と山と、どっちだい?」と、みんなに聞いた。ちょっと考える間があって、みんな一斉に、「山!」とか、「海!」とか叫んで、どっちとも決まらなかった。みんなが叫び終わると、校長先生は、いった。「いいかい、デンブは、海だよ」「なんで」と、肥った男の子が聞いた。校長先生は、机の輪の真ん中に立つと、「デンブは、魚の身をほぐして、細かくして、炒って作ったものだからさ」と説明した。「ふーん」と、みんなは、感心した声を出した。そのとき誰かが、「先生、トットちゃんのデンブ、見てもいい?」と聞いた。校長先生が、「いいよ」というと、学校中の子が、ゾロゾロ立ってきて、トットちゃんのデンブを見た。デンブは知ってて、食べたことはあっても、今の話で、急に興味が出てきた子も、また、自分の家のデンブと、トットちゃんのと、少し、かわっているのかな?と思って、見たい子もいるに違いなかった。デンブを見にきた子の中には、においをかぐ子もいたので、トットちゃんは、鼻息で、デンブが飛ばないか、と心配になったくらいだった。でも、初めてのお弁当の時間は、少しドキドキはしたけど、楽しくて、「海のものと山のもの」を考えるのも面白いし、デンブがお魚って分かったし、ママは、「海のものと山のもの」を、ちゃんと入れてくれたし、トットちゃんは、(ぜんぶ、よかったな)と、嬉しくなった。そして、次に、嬉しいのは、ママの弁当は、食べると、おいしいことだった。
よく噛めよ で、普通なら、これで、「いただきまーす」になるんだけど、このトモエ学園は、ここで、合唱が入るのが、また、変わっていた。校長先生は、音楽家でもあったから、「お弁当を食べる前に歌う歌」というのを作った。ただし、これは、作曲が、イギリス人で、歌詞だけが、校長先生だった。