第14章 (第3/3页)
た。 「リトミックって、どういうものですか?」 という質問に、小林先生は、こう答えた。 「リトミックは、体の機械組織を、さらに精巧にするための遊戯です。リトミックは、心に運動術を教える遊戯です。リトミックは、心と体に、リズムを理解させる遊戯です。リトミックを行うと、正確が、リズミカルになります。リズミカルな性格は美しく、強く、素直に、自然の法則に従います。」 まだ、いろいろあるけれど、とにかく、トットちゃん達のクラスは、体にリズムを理解させることから始まった。行動の小さいステージの上のピアノを校長先生が弾く。それに合わせて、生徒は、思い思いの場所から歩き始める。どう歩いてもいいけど、人の流れと逆流して歩くと、ぶつかって、気持ちが悪いから、なんとなく、同じ方向に、つまり、輪になる形で、でも一列とかじゃなく、自由に流れるように歩くのだった。そして、音楽を聴いて、それが“二拍子”だと思ったら、両手を大きく指揮者のように上下に二拍子に振りながら、歩く。足は、ドタドタじゃなく、そうかといって、バレエのような、つま先立ちでもなく、どっちかっていえば、「足の親指を引きずるように、体を楽に、自由にゆすれる形で、歩くのが、いい」と先生はいった。でも、いずれにしても、自然が第一だったから、その生徒の感じる歩き方でよかった。そして、リズムが三拍子になったら両腕は、すぐに三拍子を大きくとり、歩き方も、テンポに合わせて、早くなったり、遅くなったりさせなきゃ、いけなかった。そして、両腕の指揮風上げ下ろしも、六拍子まであったから、四拍子くらいだと、まだ 「下げて、まわして、横から、上に」 ぐらいだけど、五拍子になると、 「下げて、まわして、前に出して、横にひいて、そのまま上に」 で、六拍子になると、もう、 「下げて、まわして、前に出して、もう一度、胸の前で、まわして、横にひいて、そのまま上に」 だから、拍子が、どんどん変わると、結構難しかった。そして、もっと難しいのは、校長先生が、時々ピアノを弾きながら、 「ピアノが変わっても、すぐには変わるな!」 と大きい声で、いうときだった。例えば、それは、初め、“二拍子”のリズムで歩いていると、ピアノが“三拍子”になる。だけど、三拍子を聞きながら、二拍子のままで歩く。これは、とても苦しいけど、こういうときに、かなり、子供の集中力とか、自分の、しっかりした意志なども養うことが出来る、と校長先生は考えたようだった。 さて、先生が叫ぶ。 「いいよ!」 生徒は、「ああ、うれしい……」と思って、すぐ三拍子にするのだけど、このときに、まごついてはダメ、瞬間的に、さっきの二拍子を忘れて、頭の命令を体で、つまり筋肉の実行に移し、三拍子のリズムに順応しなければ、いけない、と思った途端に、ピアノは、五拍子になる、という具合だった。