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第15章

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    第15章 (第3/3页)

らい、中に電球を入れて、暖めた。トットちゃんは、一日中、ヒヨコを見て暮らした。黄色いヒヨコは可愛かった。ところが突然、四日目に一羽が。五日目にもう一羽が、動かなくなってしまった。どんなに手でさすっても、呼んでも、もう二度とピイピイとはいわなかった。そして、いつまで待っても目を開かなかった。パパとママの言ったことは正しかった。トットちゃんは、ひとりで泣きながら庭に穴を掘って、二羽を埋めた。そして、小さいお花を、お供えした。ヒヨコのいなくなった箱は、ガランとして大きく見えた。箱の中のほうに、小さい黄色の羽が落ちてるのを見つけたとき、縁日でトットちゃんを見て鳴いてたときの姿を思い出し、トットちゃんは、歯を食いしばって泣いた。一生のお願いが、こんなに早く、なくなってしまった……。これがトットちゃんが人生で最初に味わった「別れ」というものだった。

    校長先生は、トモエの生徒の父兄に、「一番わるい洋服を着せて、学校に寄こしてください」と、いつもいっていた。というのは、“汚したら、お母さんにしかられる”とか、“破けるから、みんなと遊ばない”ということは、子供にとって、とてもつまらないことだから、どんなに泥んこになっても、破けても、かまわない、一番わるい洋服を着させてください、というお願いだった。トモエの近くの小学校には、制服を着てる子もいたし、セーラー服とか、学生服に半ズボン、という服装もあった。だけど、トモエの子は、本当に普段着で学校に来た。そして先生のお許しがあるわけだから、洋服のことを気にしないで、もうできるだけ遊んだ。でも今のように、ジーンズなど丈夫な布地のない時代だったから、どの子のズボンも、つぎがあたっていたし、女の子のスカートも、出来るだけ、丈夫な布で作ってあった。トットちゃんの、最も大好きな遊びは、よその家の垣根や、原っぱの垣根の下をくぐることだったから、洋服のことを考えなくていいのは、都合がよかった。その頃の垣根は、子供達が「デツジュウモウ(鉄条網)」と呼んでいる有刺鉄線というか、バラ線が、柵の周りに張り巡らしてあるのが多かった。中には、地面につくくらい下のほうまで、しっかり、絡んでいるのもよくあった。これに、どうやってもぐりこむか、といえば、この垣根の下に頭を突っ込んで、テツジョウモウを押し上げ、穴を掘って、もぐる、ちょうど、犬と同じやり方だった。そして、このとき、トットちゃんも、気をつけてはいるのだけれど、どうしても、トゲトゲの鉄線に洋服がひっかかって、破けてしまうのだった。いつかなどは、かなり古くて、「しょう」の抜けているメリンス風の布地のワンピースを着てるときだったけど、このときは、スカートが破ける、とか、引っかかった、というのじゃなく、背中からお尻にかけて、七ヶ所くらい、ジャキジャキに破けて、どう見ても、背中にハタキを背負ってる、という風になってしまった。
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