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第21章

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    第21章 (第2/3页)

いう声が聞こえた。女の子も、大きい声で、「……男でござる」などと叫んだから、道を歩く人は、笑って振り返ったりした。自由が丘から泉岳寺までは、約三里(十二キロ)の道のりだった。でも車もほとんどなく、空は青い、十二月の東京、「天野屋利兵衛は男でござる」を連発しながら、ゾロゾロ歩く子供たちにとっては、ちっとも苦にならない道だった。泉岳寺に着くと、丸山先生、みんなに、お線香や、水や、花を渡した。九品仏のお寺よりは、小さかったけど、お墓は、たくさん、並んでいた。そして、ここに、「シジュウシチシ」という人が、お祭りしてあるのだ、と思うと、トットちゃんも、おごそかな気分になって、お線香や、お花を供えて、黙って、丸山先生のするように、お辞儀した。生徒たちの間に、静寂、というようなものが広がった。トモエには珍しく、静かになった。どのお墓の前のお線香も、長く長く、空に、煙で絵を描いていた。その日以来、トットちゃんにとって、お線香のにおいは、丸山先生の、においになった。そして、それは、また、「ベンケイ シクシク」のにおいでもあり、「天野屋利兵衛」の、においでもあり、「静か……」の、においでもあった。子供たちは、ベンケイも四十七士も、あんまり、よくは、わからなかったけど、それを、熱を込めて、子供たちに話す丸山先生を、小林先生とは、また違った意味で、尊敬し、親しく思っていた。それから、丸山先生の度の強い、とても厚いレンズの向こうの、小さい目と、大きい体に似合わない、やさしい声を、トットちゃんは、大好きだと思っていた。お正月は、もう、そこまで来ていた。

    トットちゃんが、家から駅に行ったり、帰ったりする途中に、朝鮮の人が、住んでいる長屋があった。トットちゃんには、もちろん、その人たちが、朝鮮の人、ということは、わからなかった。ただ、わかっていることは、その中の一人の、おばさんが、髪の毛を、真ん中から分けて、ひっつめに結っていて、少し太っていて、先のとがった、小さいボートみたいな白いゴムの靴に、長いスカートで、胸に大きく、リボンみたいのを結んだ洋服を着ていることと、いつも、大きな声で、「マサオちゃーん!」と、自分の子供を探していることだった。本当に、このおばさんは、いつも、マサオちゃんの名前呼んでいた。それも、ふつうなら、「マサオちゃん」というふうに、「サ」と「オ」にアクセントが、くるんだけど、このおばさんは、「マサオちゃーん」と、「サ」だけが大きくなって、しかも、「ちゃーん」と、伸ばすところが、高い声になるので、それがトットちゃんには、悲しいみたいに聞こえた。この長屋は、トットちゃんの乗る大井町線の線路に面していて、少し高く、ガケのようになっているところにあった。マサオちゃんを、トットちゃんは知っていた。トットちゃ

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