第21章 (第3/3页)
んより、少し大きく、二年生くらいで、どこの学校に行っているのかは、わからなかったけど、モシャモシャの髪の毛をして、いつも犬を連れて、歩いていた。あるとき、トットちゃんが、学校の帰りに、この小さいガケの下を通ったときだった。マサオちゃんが、そこに仁王立ちに立っていた。両手を腰に当てて、えらそうな恰好で、突然、トットちゃんに、大きい声で叫んだ。「チョーセンジン!」それは、とても憎しみのこもった、鋭い声で、トットちゃんは、怖かった。そして、何にも話をしたことも、意地悪をしたこともない男の子が、何か、憎しみを込めて、高いところから、自分に、そんなこと、いったことにも、びっくりした。トットちゃんは、家に帰ると、ママに報告した。「私のこと、マサオちゃんが、チョーセンジン!といった」ママは、トットちゃんの報告を聞くと、手を口に当てた。そして、みるみるうちに、ママの目に、涙が、いっぱいになった。トットちゃんは驚いた。何か、とても悪いことなのかと思ったから、すると、ママは、鼻の頭を赤くして、涙を拭きもしないで、こういった。「かわいそうに……。きっとみんながマサオちゃんに、「朝鮮人!朝鮮人!」と言うんでしょうね。だから、「朝鮮人!」というのは、人に対しての悪口の言葉だと思っているのね。マサオちゃんには、まだ、わからないのよ、小さいから。よく、みんなが、悪口を言うとき、「馬鹿!」なんて言うでしょう?」マサオちゃんは、そんな風に、誰かに悪口を言いたかったので、いつも自分が、人から言われているように、「チョーセンジン!」と、あなたに、いってみたんでしょう。なんて、みんなは、ひどいことをいうのかしらね……」それから、ママは涙をふくと、トットちゃんに、ゆっくり、こういった。「トットちゃんは、日本人で、マサオちゃんは、朝鮮という国の人なの。だけど、あなたも、マサオちゃんも、同じ子供なの。だから、絶対に、「あの人は日本人」とか、「あの人は朝鮮人」とか、そんなことで区別しないでね。マサオちゃんに、親切にしてあげるのよ。朝鮮の人だからって、それだけで、悪口言われるなんて、なんて気の毒なんでしょう」トットちゃんは、まだ、そういうことは、難しかったけど、少なくとも、あのマサオちゃんが、理由なく、人から悪口を言われている子供だってことは、わかった。そして、だから、いつもお母さんが、マサオちゃんを心配して探しているのだろう、と考えた。だから次の朝、またガケの下を通ったとき、お母さんが、かん高い声で、「マサオちゃーん!」と呼んでるのを聞きながら、(マサオちゃんは、どこに行ったのかしら?)と思い、(私はチョーセンジンという人じゃないらしいけど、もし、マサオちゃんが、また私に、そういったら、「みんな同じ子供!」といって、お友達になろう)と考えていた。