返回

第27章

首页
关灯
护眼
字:
上一页 回目录 下一章 进书架
    第27章 (第3/3页)

子供のことを考えている教育者にとっては、毎日が、悩みの連続に違いなかった。まして、このトモエ学園のように、なにから、なにまで、変わっている学校が、異なる教育方針を持っている人たちから、非難を、受けないはずはなかった。そんな中の、この生徒たちの合唱は、校長先生にとって、なによりの、贈り物だった。そして、子供たちは、飽きもしないで、いつまでも、いつまでも、繰り返し、歌うのだった。その日は、いつもより、“追い出しのベル”は、遅く、鳴った。

    今日、トットちゃんは、悲しかった。もう、トットちゃんは、三年生になっていて、同級生の泰ちゃんを、とても好きだと思っていた。頭がよくて、物理が出来た。英語を勉強していて、最初に「キツネ」という英語を教えてくれたのも、泰ちゃんだった。「トットちゃん、キツネは、フォックスだよ」(フォックスかあ……)その日、トットちゃんは、一日“フォックス”という響きに、ひたったくらいだった。だから、毎朝、電車の教室に行くと、最初にする事は、泰ちゃんの筆箱の中の鉛筆を、全部ナイフで、きれいに、けずってあげる事だった。自分の鉛筆ときたら、歯でむしりとって、使っているというのに。ところが、今日、その泰ちゃんが、トットちゃんを呼び止めた。そのとき、トットちゃんは、昼休みなので、プラプラと講堂の裏の、れのトイレの汲み取り口のあたりを散歩してたんだけど、「トットちゃん!」という泰ちゃんの声が、怒ってるみたいなので、びっくりして立ち止った。泰ちゃんは、一息つくと、いった。「大きくなって、君がどんなに頼んでも、僕のお嫁さんには、してあげないからね!」それだけいうと、泰ちゃんは、下を向いたまま、歩いて行ってしまった。トットちゃんは、ポカンとして、その泰ちゃんの頭が……脳味噌が、いっぱい詰まっている、自分の尊敬してる頭、仮分数、という仇名の頭が……見えなくなるまで見ていた。トットちゃんは、ポケットに手を突っ込んだまま考えた。思いあたる事は、ないように思えた。仕方なく、トットちゃんは、同級生のミヨちゃんに相談した。ミヨちゃんは、トットちゃんの話を聞くと、大人っぽい口調で、こういった。「そりゃ、そうよ。だって、トットちゃん、今日、お相撲の時間に、泰ちゃんのこと、投げ飛ばしたじゃないの。泰ちゃんは、頭が重いから、すーっと、と土俵の外に、すっとんだんだもの。そりゃ、怒るわよ」トットちゃんは、心のそこから後悔した。(そうだった)、毎日、鉛筆をけっずてあげるくらい好きな人を、なんて、おすもうの時間に、すっかり忘れて、投げ飛ばしちゃったんだろう……。でも、もう遅かった。トットちゃんが、泰ちゃんのお嫁さんになれない事は、決まってしまった。(でも、明日から、やっぱり、鉛筆は、けずってあげよう)だって、好きなんだもの。
上一页 回目录 下一章 存书签