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第29章

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    第29章 (第2/3页)

た。それとも、トットちゃんが、あまり一生懸命に歌ったので、いじらしく、かわいく思ったのかも知れなかった。そして、もしかすると、戦地での体験で、(もうじき食べ物もなくなるのに、“よく噛めよ”の歌を歌ってる)と、可哀そうに思ったのかも知れなかった。そして兵隊さんには、この子供達が、これから巻き込まれる、本当の恐ろしいことが、わかっていたのかも、知れなかった。作文を読む子供たちの知らないうちに、太平洋戦争は、もう、いつのまにか、始まっていたのだった。

    もう、すっかり顔なじみになった、自由が丘の改札口のおじさんに、トットちゃんは、首から紐で下げた定期を見せると、駅を出た。さて、今日は、そこに、とても面白そうなことが起こっていた。それは、若いお兄さんが、ゴザを敷いて、その上に、あぐらをかいて座っていて、そのお兄さんの前には、木の皮みたいのが、山のように、積んであった。そして、そのまわりには、見物人が、五、六人、たまって、そのお兄さんのすることを見物していたのだった。トットちゃんも、その見物の中に加わってみることにした。どうしてかっていえば、そのお兄さんが、「さあ、見てごらん、見てごらん」と、いったからだった。トットちゃんが立ち止ったのを見ると、お兄さんは、いった。「さあ、人間は健康が第一。朝起きて、自分が元気か、病気か、調べるのが、この木の皮だ。朝、この木の皮を噛んでみて、もし、にがかったら……、それは、病気という証拠。もし、噛んでも、にがくなかったら、あんたは大丈夫、病気じゃない。たったの二十銭で、病気がわかる、この木の皮、さあ、そこの旦那さん、ためしに噛んでみてください」少し、やせた男の人が、渡された木の皮を、おそるおそる、前歯で噛んだ。そして、ちょっとして、その人は、首をかしげながら、いった。「少し、苦い……ような木がする……」お兄さんは、それを聞くと、飛び上がって叫んだ。「旦那さん、あんたは病気にかかっている。気をつけなさいよ。でも、まだ、そう悪くはない、苦いような、“気がしてる”んだから。じゃ、そこの奥さん、ちょっと、これを同じように噛んでみてください」おつかい籠を下げた、おばさんは、かなり幅の広いのを、ガリッ!と、いきおいよく噛んだ。そして、うれしそうに、いった。「まあ!ぜんぜんにがくありません」「よかったねえ、奥さん、元気だよ、あんたは!」そして、それから、もっと大きい声で、いった。「二十銭だよ、二十銭!これで毎朝、病気にかかってるかどうか、わかるんだから。安いもんだ!」トットちゃんは、その、ねずみ色みたいな皮を、自分も試しに、噛ませてもらいたい、と思った。だけど、「私にも……」という勇気はなかった。その代わり、トットちゃんは、お兄さんに聞いた。「学校が終わるまで、ここに居る?」「

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