第32章 (第2/3页)
生きてる泰明ちゃんと逢いたい。逢って、話がしたい)という思い出、胸がいっぱいだった。教会は、白い百合の花が、たくさんあった。泰明ちゃんの、きれいなお姉さんや、お母さんや、お家の人達が、黒い洋服を着て、入口の外に立っていた。みんな、トットちゃん達を見ると、それまでより、もっと泣いた。みんな、白いハンケチを、ぎゅーっと持っていた。トットちゃんは、生まれて初めて、お葬式を見た。お葬式は、悲しいものとわかった。話をしてる人明るいのに、楽しい気持ちは、もう、どこを探しても、ないように思えた。腕に黒いリボンを巻いた男の人が、トモエのみんなに、白い花を一本ずつ渡して、それを持って、一列になって教会に入り、泰明ちゃんの寝てるお棺の中に、そっと、それを入れてください、と説明した。泰明ちゃんは、お棺の中にいた。花に囲まれて、目をつぶっていた。でも、死んでいても、いつものように、やさしく、利口そうに見えた。トットちゃんは、ひざをつくと、花を、泰明ちゃんの、手のところに置いた。そして、泰明ちゃんの、手に、そっと、さわった。トットちゃんが、何度も何度も、引っ張った、懐かしい手。汚れて小さいトットちゃんの手に比べて、泰明ちゃんの手は、真っ白で、指が長く、大人っぽく見えた。(じゃね)と、トットちゃんは、小さな声で、泰明ちゃんに、いった。(いつか、うんと大きくなったら、また、どっかで、逢えるんでしょう。そのとき、小児麻痺、なおってると、いいけど)それから、トットちゃんは立ち上がり、もう一度、泰明ちゃんを見た。そうだ!大事なこと忘れていた。(“アンクルトムの子屋”、もう返せないわね。じゃ、私、あずかっとく。今度、逢うときまで)そして、トットちゃんは歩き始めた。そのとき、うしろから、泰明ちゃんの声が聞こえるような気がした。「トットちゃん!いろんなこと、楽しかったね。君のこと、忘れないよ」(そうよ)トットちゃんは、教会の出口のところで、振り返って、いった。(私だって、泰明ちゃんのこと、忘れない!)明るい春の日差しが……、初めて泰明ちゃんと、電車の教室で逢った日と同じ、春の日差しが、トットちゃんの周りを、とりかこんでいた。でも、涙が、今トットちゃんの頬を伝わっているのが、初めて逢った日と、違っていた。
泰明ちゃんのことで、トモエのみんなは、ずーっと悲しかった。特にトットちゃんのクラスは、朝、電車の教室で、もう、いくら授業が始まる時間になって泰明ちゃんが来なくても、それは遅刻じゃなくて、絶対に来ないのだ、となれるのに時間が、かかった。一クラスが、たったの十人というのは、普段はいいけど、こういうときには、(とても、都合が悪い)と、みんなは思った。 [泰明ちゃんがいない] ということが、どうしても、目で見えてしまうからだった。で
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