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第20章

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    第20章 (第2/3页)

から始まったのだ。もしあの五月の日曜日に中央線の電車の中でたまたま直子に会わなかったら僕の人生も今とはずいぶん違ったものになっていただろうな、とぼくはふと思った。そしてそのすぐあとで、いやもしあのとき出会わなかったとしても結局は同じようなことになっていたかもしれないと思いなおした。多分我々はあのとき会うべくして会ったのだし、もしあのとき会っていなかったとしても、我々はべつのどこかであっていただろう。とくに根拠があるわけではないのだが、僕はそんな気がした。

     僕と小林緑は二人で公園のベンチに座って彼女の通っていた高校の建物を眺めた。校舎にはつたが絡まり、はりだしには何羽か鳩がとまって羽をやすめていた。趣きのある古い建物だった。庭には大きな樫の木がはえていて、そのわきから白い煙がすうっとまっすぐに立ちのぼっていた。夏の名残りの光が煙を余計にぼんやりと曇らせていた。

     「ワタナベ君、あの煙なんだか分かる?」突然緑が言った。

     わからない、と僕は言った。

     「あれ生理ナプキン焼いてるのよ」

     「へえ」と僕は言った。それ以上に何と言えばいいのかよくわからなかった。

     「生理ナプキン、タンポン、その手のもの」と言って緑はにっこりした。「みんなトイレの汚物入れにそういうの捨てるでしょ、女子校だから。それを用務員のおじいさんが集めてまわって焼却炉で焼くの。それがあの煙なの」

     「そう思ってみるとどことなく凄味があるね」と僕は言った。

     「うん、私も教室の窓からあの煙をみるたびにそう思ったわよ。凄いなあって。うちの学校は中学、高校あわせる千人近く女の子がいるでしょ。まあまだ始まってない子もいるから九百人として、そのうちの五分の一が生理中として、だいたい百八十人よね。で、一日に百八十人ぶんの生理ナプキンが汚物入れに捨てられるわけよね」

     「まあそうだろうね。細かい計算はよくわからないけど」

     「かなりの量だわよね。百八十人ぶんだもの。そういうの集めてまわって焼くのってどういう気分のものなのかしら?」

     「さあ、見当もつかない」と僕は言った。どうしてそんなことが僕にわかるというのだ。そして我々はしばらく二人でその白い煙を眺めた。

     「本当は私あの学校に行きたくなかったの。」と緑は言って小さく首を振った。「私はごく普通の公立の学校に入りたかったの。ごく普通の人がいくごく普通の学校に。そして楽しくのんびりと青春を過ごしたかったの。でも親の見栄であそこに入れられちゃ

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