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第20章

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    第20章 (第3/3页)

ったのよ。ほら小学校のとき成績が良いとそういうとこあるでしょ?先生がこの子の成績ならあそこに入れなすよ、ってね。で、入れられちゃったわけ。六年通ったけどどうしても好きになれなかったわ。一日も早くここを出ていきたい、一日も早くここを出ていきたいって、そればかり考えて学校に通ってたの。ねえ、私って無遅刻?無欠席で表彰までされたのよ。そんなに学校が嫌いだったのに。どうしてだかわかる?」

     「わからない」と僕は言った。

     「学校が死ぬほど嫌いだったからよ。だから一度も休まなかったの。負けるものかって思ったの。一度負けたらおしまいだって思ったの。一度負けたらそのままずるずる行っちゃうんじゃないかって怖かったのよ。三十九度の熱があるときだって這って学校に行ったわよ。先生がおい小林具合わるいんじゃないかって言っても、いいえ大丈夫ですって嘘ついてがんばったのよ。それで無遅刻?無欠席の表彰状とフランス語の辞書をもらったの。だからこそ私、大学でドイツ語をとったの。だってあの学校に恩なんか着せられちゃたまらないもの。そんなの冗談じゃないわよ。」

     「学校のどこが嫌いだったの?」

     「あなた学校好きだった?」

     「好きでもとくに嫌いでもないよ。僕はごく普通の公立高校に通ったけどとくに気にはしなかったな。」

     「あの学校ね」と緑は小指で目のわきを掻きながら言った。「エリートの女の子のあつまる学校なのよ。育ちも良きゃ成績も良いって女の子が千人近くあつめられてるの。ま、金持の娘ばかりね。。でなきゃやっていけないもの。授業料高いし、寄付もしょっちゅうあるし、修学旅行っていや京都の高級旅館を借りきって塗りのお膳で懐石料理食べるし、年に一回ホテル?オークラの食堂でテーブル?マナーの講習があるし、とにかく普通じゃないのよ。ねえ、知ってる?私の学年百六十人の中で豊島区に住んでる生徒って私だけだったのよ。私一度学生名簿を全部調べてみたの。みんないったいどんなところに住んでるだろうって。すごかったわねえ、千代田《ちよだ》区三番町、港区|元麻布《もとあざぶ》、大田区|田園調布《でんえんちょうふ》、世田谷《せたがや》区|成城《せいじょう》……もうずうっとそんなのばかりよ。一人だけ千葉県|柏市《かしわし》っていう女の子がいてね、私その子とちょっと仲良くなってみたの。良い子だったわよ。家にあそびにいらっしゃいよ、遠くてわるいけどっていうからいいわよって行ってみたの。仰天しちゃったわね。なにしろ敷地を一周するのに十五分かかるの。すごく庭があって、小型車くらい大きさの犬が二匹いて牛肉のかたまりをむしゃむしゃ食べてるわけ。
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