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第22章

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    第22章 (第2/3页)

町を縫うようにすると走っていった。途中の駅で何人か客がこりこんできたが、三人のおばあさんたちは飽きもせず何かについて熱心に頭をつき合わせて話しつづけていた。

     大塚駅の近くで僕は都電を降り、あまり見映えのしない大通りを彼女が地図に描いてくれたとおりに歩いた。道筋に並んでいる商店はどれもこれもあまり繁盛《はんじょう》しているようには見えなかった。どの店も建物は旧く、中は暗そうだった。看板の字が消えかけているものもあった。建物の旧さやスタイルから見て、このあたりが戦争で爆撃を受けなかったらしいことがわかった。だからこうした家並みがそのままに残されているのだ。もちろん建てなおされたものもあったし、どの家も増築《ぞうちく》されたら部分的に補修されたりはしていたが、そういうのはまったくの古い家より余計に汚らしく見えることのほうが多かった。

     人々の多くは車の多さや空気の悪さや騒音や家賃の高さに音をあげて郊外に移っていってしまい、あとに残ったのは安アパートか社宅か引越しのむずかしい商店か、あるいは頑固《がんこ》に昔から住んでいる土地にしがみついている人だけといった雰囲気の町だった。車の排気ガスのせいで、まるでかすみがかかったみたいに何もかもがぼんやりと薄汚れていた。

     そんな道を十分ばかり歩いてガソリン?スタンドの角を右に曲ると小さな商店街があり、まん中あたりに「小林書店」という看板が見えた。たしかに大きな店ではなかったけれど、僕が緑の話から想像していたほど小さくはなかった。ごく普通の町のごく普通の本屋だった。僕が子供の頃、発売日を待ちかねて少年週刊誌を買いに走っていったのと同じような本屋だった。小林書店の前に立っていると僕はなんとなく懐かしい気分になった。どこの町にもこういう本屋があるのだ。

     店はすっかりシャッターをおろし、シャッターには「週刊文春?毎週木曜日発売」と書いてあった。十二時にはまだ十五分ほど間があったが、水仙の花を持って商店街を歩いて時間をつぶすのもあまり気が進まなかったので、僕はシャッターのわきにあるベルを押して、二、三歩後ろにさがって返事を待った。十五秒くらい待ったが返事はなかった。もう一度ベルを押したものかどうか迷っていると、上の方でガラガラと窓の開く音がした。見上げると緑が窓から首を出して手を振っていた。

    「シャッター開けて入ってらっしゃいよ」と彼女はどなった。

    「ちょっと早かったけど、いいかな?」と僕もどなりかえした。

    「かまわないわよ、ちっとも。二階に上がってきてよ。私、今ちょっと手が放せないの」そしてまたガラガラと窓が閉まった。

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