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第23章 (第1/3页)
うしろから見ると彼女の腰はびっくりするくらいほっそりとしていた。まるでこしをがっしりと固めるための成長の一過程が何かの事情でとばされてしまったんじゃないかと思えるくらいの華奢《きゃしゃ》な腰だった。そのせいで普通の女の子がスリムのジーンズをはいたときの姿よりはずっと中性的な印象があった。流しの上の窓から入ってくる明るい光が彼女の体の輪郭《りんかく》にぼんやりとふちどりのようなものをつけていた。
「そんなに立派な食事作ることなかったのにさ」と僕は言った。
「ぜんぜん立派じゃないわよ」と緑はふりむかずに言った。「昨日は私忙しくてろくに買物できなかったし、冷蔵庫のありあわせのものを使ってさっと作っただけ。だからぜんぜん気にしないで。本当よ。それにね、客あしらいの良いのはうちの家風なの。うちの家族ってね、どういうわけだか人をもてなすのが大好きなのよ、根本的に。もう病気みたいなものよね、これ。べつにとりたてて親切な一家というわけでもないし、べつにそのことで人望があるというのでもないんだけれど、とにかくお客があるとなにはともあれもてなさないわけにはいかないの。全員がそういう性分なのよ、幸か不幸か。だからね、うちのお父さんなんか自分じゃ殆んどお酒飲まないくせに家の中もうお酒だらけよ。なんでだと思う?お客に出すためよ。だからビールどんどん飲んでね、遠慮なく」
「ありがとう」と僕は言った。
それから突然僕は水仙の花を階下に置き忘れてきたことに気づいた。靴を脱ぐときに横に置いてそのまま忘れてきてしまったのだ。僕はもう一度下におりて薄暗がりの中に横たわった十本の水仙の白い花をとって戻ってきた。緑は食器棚から細長いグラスをだして、そこに水仙をいけた。
「私、水仙って大好きよ」と緑は言った。「昔ね高校の文化祭で『七つの水仙』唄ったことあるのよ。知ってる、『七つの水仙』?」
「知ってるよ、もちろん」
「昔フォーク?グループやってたの。ギター弾いて」
そして彼女は「七つの水仙」を歌いながら料理を皿にもりつけていった。
緑の料理は僕の想像を遙かに越えて立派なものだった。鯵の酢のものに、ぽってりとしただしまき玉子、自分で作ったさわらの西京漬、なすの煮もの、じゅんさいの吸い物、しめじの御飯、それにたくあんを細かくきざんで胡麻をまぶしたものがたっぷりとついていた。味つけはまったく関西風の薄味だった。
「すごくおいしい」と僕は感心して言った。
「ねえワタナベ君、正直
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