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第31章 (第1/3页)
谷川に沿ってその杉林の中をずいぶん長い時間進み、世界中が永遠に杉林で埋め尽くされてしまったんじゃないかという気分になり始めたあたりでやっと林が終わり、我々はまわりを山に囲まれた盆地のようなところに出た。盆地には青々とした畑が見わたす限り広がり、道路に沿ってきれいな川が流れていた。遠くの方で白い煙が一本細くたちのぼり、あちこちの物干には洗濯物がかかり、犬が何匹か吠えていた。家の前にはたき木が軒下までつみあげられ、その上で猫が昼寝をしていた。道路沿いにしばらくそんな人家がつづいていたが人の姿はまったく見あたらなかった。
そういう風景が何度もくりかえされた。バスは杉林に入り、杉林を抜けて集落に入り、集落を抜けてまた杉林に入った。集落にバスが停まるたびに何人かの客が降りた。乗りこんでくる客は一人もいなかった。市内を出発して四十分ほどで眺望の開けた峠に出たが、運転手はそこでバスを停め、五、六分待ちあわせするので降りたい人は降りてかまわないと乗客に告げた。客は僕を含めて四人しか残っていなかったがみんなバスを降りて体をのばしたり、煙草を吸ったり、目下に広がる京都の町並みを眺めたりした。運転手は立小便をした。ひもでしばった段ボール箱を車内に持ちこんでいた五十前後のよく日焼けした男が、山に上るのかと僕に質問した。面倒臭いので、そうだと僕は返事した。
やがて反対側からバスが上ってきて我々のバスのわきに停まり、運転手が降りてきた。二人の運転手は少し話しをしてからそれぞれのバスに乗りこんだ。乗客も席に戻った。そして二台のバスはそれぞれの方向に向ってまた進み始めた。どうして我々のバスが峠の上でもう一台のバスが来るのを待っていたかという理由はすぐに明らかになった。山を少し下ったあたりから道幅が急に狭くなっていて二台の大型がすれちがうのはまったく不可能だったからだ。バスは何台かのライトバンや乗用車とすれちがったが、そのたびにどちらかがバックして、カーブのふくらみにぴったりと身を寄せなくてはならなかった。
谷川に沿って並ぶ集落も前に比べるとずっと小さくなり、耕作してある平地も狭くなった。山が険しくなり、すぐ近くまで迫っていた。犬の多いところだけがどの集落も同じで、バスが来ると犬たちは競いあうように吠えた。
僕が降りた停留所のまわりには何もなかった。人家もなく、畑もなかった。停留所の標識がぽつんと立っていて、小さな川が流れていて、登山ルートの入口があるだけだった。僕はナップザックを肩にかけて、谷川に沿って登山ルートを上り始めた。道の左手には川が流れ、右手には雑木林がつづいていた。そんな緩やかな上り道を十五分ばかり進むと右手に車がやって一台通れそ
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