第31章 (第2/3页)
うな枝道があり、その入口には「阿美寮?関係者以外の立ち入りはお断りします」という看板が立っていた。
雑木林の中の道にはくっきりと車のタイヤのあとがついていた。まわりの林の中で時折ばたばたという鳥の羽ばたきのような音が聞こえた。部分的に拡大されたように妙に鮮明な音だった。一度だけ銃声のようなボオンという音が遠くの方で聞こえたが、こちらは何枚かフィルターをとおしたみたいに小さくくぐもった音だった。
雑木林を抜けると白い石塀が見えた。石塀といっても僕の背丈くらいの高さで上に柵や網がついているわけではなく越えようと思えばいくらでも越えられる代物だった。黒い門扉は鉄製で頑丈そうだったが、これは開けっ放しになっていて、門衛小屋には門衛の姿は見えなかった。門のわきには「阿美寮?関係者以外の立ち入りはお断りします」というさっきと同じ看板がかかっていた。門衛小屋にはつい先刻まで人がいたことを示す形跡が残っていた。灰皿には三本吸殻があり、湯のみには飲みかけの茶が残り、棚にはトランジスタ?ラジオがあり、壁では時計がコツコツという乾いた音を立てて時を刻んでいた。僕はそこで門衛の戻ってくるのを待ってみたが、戻ってきそうな気配がまるでないので、近くにあるベルのようなものをニ、三度押してみた。門の内側のすぐのところは駐車場になっていて、そこにはミニ?バスと4WDのランド?クルーザーとダークブルーのボルボがとまっていた。三十台くらいは車が停められそうだったが、停まっているのはその三台きりだった。
ニ、三分すると紺の制服を着た門衛が黄色い自転車に乗って林の中の道をやってきた。六十歳くらいの背の高い額が禿げ上がった男だった。彼は黄色い自転車を小屋の壁にもたせかけ、僕に向って、「いや、どうもすみませんでしたな」とたいしてすまなくもなさそうな口調で言った。自転車の泥よけには白いペンキで32と書いてあった。僕が名前を言うと彼はどこかに電話をかけ、僕の名前を二度繰り返して言った。相手が何かを言い、彼ははい、はあ、わかりましたと答え、電話を切った。
「本館に行ってですな、石田先生と言って下さい」と門衛は言った。「その林の中の道を行くとロータリーに出ますから二本目の―-いいですか、左から二本目の道を行って下さい。すると古い建物がありますので、そこを右に折れてまたひとつ林を抜けるとそこに鉄筋のビルがありまして、これが本館です。ずっと立札が出とるからわかると思います」
言われたとおりにロータリーの左から二本目の道を進んでいくと、つきあたりにはいかにも一昔前の別荘とわかる趣きのある古い建物があった。庭には形の良い石やら、灯籠なんかが配され、植
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