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第42章

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    第42章 (第3/3页)

物の上手な人は編物を教えるし。そういうのだけでもちょっとした学校みたいになっちゃうのよ。残念ながら私には他人に教えてあげられるようなものは何もないけれど」

    「僕にもないね」

    「とにかく私、大学にいたときよりずっと熱心に学んでいるわよ、ここで。よく勉強もしているし、そういうのって楽しいのよ、すごく」

    「夕ごはんのあとはいつも何するの?」

    「レイコさんとおしゃべりしたり、本を読んだり、レコードを聴いたり、他の人の部屋にいってゲームをしたり、そういうこと」と直子は言った。

    「私はギターの練習をしたり、自叙伝を書いたり」とレイコさんは言った。

    「自叙伝?」

    「冗談よ」とレイコさんは笑って言った。「そして私たち十時くらいに眠るの。どう、健康的な生活でしょう?ぐっすり眠れるわよ」

    僕は時計を見た。九時少し前だった。「じゃあもうそろそろ眠いんじゃないですか?」

    「でも今日は大丈夫よ、少しくら遅くなっても」と直子は言った。「久しぶりだからもっとお話がしたいもの。何かお話して」

    「さっき一人でいるときにね、急にいろんな昔のこと思い出してたんだ」と僕は言った。「昔キズキと二人で君を見舞いに行ったときのこと覚えてる?海岸の病院に。高校二年生の夏だっけな」

    「胸の手術したときのことね」と直子はにっこり笑って言った。「よく覚えているわよ。あなたとキズキ君がバイクに乗って来てくれたのよね。ぐじゃぐじゃに溶けたチョコレートを持って。あれ食べるの大変だったわよ。でもなんだかものすごく昔の話みたいな気がするわね」

    「そうだね。その時、君はたしかに長い詩を書いてたな」

    「あの年頃の女の子ってみんな詩を書くのよ」とくすくす笑いながら直子は言った。「どうしてそんなこと急に思い出したの?」

    「わからないな。ただ思い出したんだよ。海風の匂いとか夾竹桃とか、そういうのがさ、ふと浮かんできたんだよ」と僕は言った。「ねえ、キズキはあのときよく君の見舞いに行ったの?」

    「見舞いになんて殆んど来やしないわよ。そのことで私たち喧嘩したんだから、あとで。はじめに一度来て、それからあなたと二人できて、それっきりよ。ひどいでしょう?最初にきたときだってなんだかそわそわして、十分くらいで帰っていったわ。オレンジ持ってきてね。ぶつぶつよくわけのわからないこと言って、それからオレンジをむいて食べさせてくれて、またぶつぶつわけのわからないこと言って、ぷいって帰っちゃったの。
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