第58章 (第3/3页)
僕は正直に答えた。
「どうして?私が魅力的じゃないから?」
「違うよ。君は魅力的だし、可愛いし、挑発的な格好がよく似合うよ」
「じゃあどうして私のこと考えないの?」
「まず第一に僕は君のことを友だちだと思ってるから、そういうことにまきこみたくないんだよ。そういう性的な幻想にね。第二に――」
「他に想い浮かべるべき人がいるから」
「まあそういうことだよね」と僕は言った。
「あなたってそういうことでも礼儀正しのね」と緑は言った。「私、あなたのそういうところ好きよ。でもね、一回くらいちょっと私を出演させてくれない?その性的な幻想だか妄想だかに。私そういうのに出てみたいのよ。これ友だちだから頼むのよ。だってこんなこと他の人に頼めないじゃない。今夜マスターベーションするときちょっと私のこと考えてね、なんて誰にでも言えることじゃないじゃない。あなたをお友だちだと思えばこそ頼むのよ。そしてどんなだったかあとで教えてほしいの。どんなことしただとか」
僕はため息をついた。
「でも入れちゃ駄目よ。私たちお友だちなんだから。ね?入れなければあとは何してもいいわよ、何考えても」
「どうかな。そういう制約のあるやつってあまりやったことないからねえ」と僕は言った。
「考えておいてくれる?」
「考えておくよ」
「あのねワタナベ君。私のことを淫乱とか欲求不満だとか挑発的だとかいう風には思わないでね。私ただそういうことにすごく興味があって、すごく知りたいだけなの。ずっと女子校で女の子だけの中で育ってきたでしょ?男の人が何を考えて、その体のしくみがどうなってるのかって、そういうことをすごく知りたいのよ。それも婦人雑誌のとじこみとかそういうんじゃなくて、いわばケース?スタディーとして」
「ケース?スタディー」と僕は絶望的につぶやいた。
「でも私がいろんなことを知りたがったりやりたがったりすると、彼不機嫌になったり怒ったりするの。淫乱だって言って。私の頭が変だって言うのよ。フェラチオだってなかなかさせてくれないの。私あれすごく研究してみたいのに」
「ふむ」と僕は言った。
「あなたフェラチオされるの嫌?」
「嫌じゃないよ、べつに」
「どちらかというと好き?」
「どちらかというと好きだよ」と僕は言った。