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第59章 (第1/3页)
「でもその話また今度にしない?今日はとても気持の良い日曜の朝だし、マスターベーションとフェラチオの話をしてつぶしたくないんだ。もっと違う話をしようよ。君の彼はうちの大学の人?」
「ううん、よその大学よ、もちろん。私たち高校のときのクラブ活動で知りあったの。私は女子校で、彼は男子校で、ほらよくあるでしょう?合同コンサートとか、そういうの。恋人っていう関係になったのは高校出ちゃったあとだけれど。ねえ、ワタナベ君?」
「うん?」
「本当に一回でいいから私のことを考えてよね」
「試してみるよ、今度」と僕はあきらめて言った。
我々は駅から電車に乗ってお茶の水まで行った。僕は朝食を食べていなかったので新宿駅で乗りかえるときに駅のスタンドで薄いサンドイッチを買って食べ、新聞のインクを煮たような味のするコーヒーを飲んだ。日曜の朝の電車はこれからどこかに出かけようとする家族連れやカップルでいっぱいだった。揃いのユニフォームを着た男の子の一群がバットを下げて車内をばたばたと走りまわっていた。電車の中には短いスカートをはいた女の子が何人もいたけれど、緑くらい短いスカートをはいたのは一人もいなかった。緑はときどききゅっきゅっとスカートの裾をひっばって下ろした。何人かの男はじろじろと彼女の太腿を眺めたのでどうも落ちつかなかったが、彼女の方はそういうのはたいして気にならないようだった。
「ねえ、私が今いちばんやりたいことわかる?」と市ヶ谷あたりで緑が小声で言った。
「見当もつかない」と僕は言った。「でもお願いだから、電車の中ではその話しないでくれよ。他の人に聞こえるとまずいから」
「残念ね。けっこうすごいやつなのに、今回のは」と緑はいかにも残念そうに言った。
「ところでお茶の水に何があるの?」
「まあついてらっしゃいよ、そうすればわかるから」
日曜日のお茶の水は模擬テストだか予備校の講習だかに行く中学生や高校生でいっばいだった。緑は左手でショルダー?バッグのストラップを握り、右手で僕の手をとって、そんな学生たちの人ごみの中をするすると抜けていった。
「ねえワタナベ君、英語の仮定法現在と仮定法過去の違いをきちんと説明できる?」と突然僕に質問した。
「できると思うよ」と僕は言った。
「ちょっと訊きたいんだけれど、そういうのが日常生活の中で何かの役に立ってる?」
「日常生活の中で役に立つとい
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