第65章 (第3/3页)
とにかくそういう話をしながらいっばいお酒飲んでぐでんぐでんに酔払って、一緒に抱きあって寝るの」
「そのあとはだいたい想像つくね」と僕はため息をついて言った。「僕がやろうとすると、君が拒否するんだろう?」
「ふふん」と彼女は言った。
「まあとにかくまた今朝みたいに朝迎えに来たくれよ、来週の日曜日に。一緒にここに来よう」
「もう少し長いスカートはいて?」
「そう」と僕は言った。
でも結局その翌週の日曜日、僕は病院に行かなかった。緑の父親が金曜日の朝に亡くなってしまったからだ。
その朝の六時半に緑が僕に電話で、それを知らせた。電話がかかってきていることを教えるブザーが鳴って、僕はパジャマの上にカーディガンを羽織ってロビーに降り、電話をとった。冷たい雨が音もなく降っていた。お父さんさっき死んじゃったの、と小さな静かな声で緑が言った。何かできることあるかな、と僕は訊いてみた。
「ありがとう、大丈夫よ」と緑は言った。「私たちお葬式に馴れてるの。ただあなたに知せたかっただけなの」
彼女はため息のようなものをついた。
「お葬式には来ないでね。私あれ嫌いなの。ああいうところであなたに会いたくないの」
「わかった」と僕は言った。
「本当にポルノ映画につれてってくれる?」
「もちろん」
「すごくいやらしいやつよ」
「ちゃんとっ探しておくよ、そういうのを」
「うん。私の方から連絡するわ」と緑は言った。そして電話を切った。
しかしそれ以来一週間、彼女からは何の連絡もなかった。大学の教室でも会わなかったし、電話もかかってこなかった。寮に帰るたびに僕への伝言メモがないかと気にして見ていたのだが、僕への電話はただの一本もかかってはこなかった。僕はある夜、約束を果たすために緑のことを考えながらマスターベーションをしてみたのだったがどうもうまくいかなかった。仕方なく途中で直子に切りかえてみたのだが、直子のイメージも今回はあまり助けにならなかった。それでなんとなく馬鹿馬鹿しくなってやめてしまった。そしてウィスキーを飲んで、歯を磨いて寝た。
*
日曜日の朝、僕は直子に手紙を書いた。僕は手紙の中で緑の父親のこと書いた。僕はその同じクラスの女の子の父親の見舞いに行って余ったキウリをかじった。