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第71章 (第1/3页)
僕は辛じて一回得点し、それからやさしいのを撞き損った。
「包帯してるせいよ」とハツミさんは慰めてくれた。
「長くやってないせいですよ。もう二年五ヶ月もやってないから」
「どうしてそんなにはっきり覚えてるの?」
「友だちと玉を撞いたその夜に彼が死んじゃったから、それでよく覚えてるんです」
「それでそれ以来ビリヤードやらなくなったの?」
「いや、とくにそういうわけではないんです」と僕は少し考えてからそう答えた。「ただなんとなくそれ以来玉撞きをする機会がなかったんです。それだけのことですよ」
「お友だちはどうして亡くなったの?」
「交通事故です」と僕は言った。
彼女は何回か玉を撞いた。玉筋を見るときの彼女の目は真剣で、玉を撞くときの力の入れ方は正確だった。彼女はきれいにセットした髪をくるりとうしろに回して金のイヤリングを光らせ、パンプスの位置をきちんと決め、すらりと伸びた美しい指で台のフェルトを押えて玉を撞く様子を見ていると、うす汚いビリヤード場のそこの場所だけが何かしら立派な社交場の一角であるように見えた。彼女と二人きりになるのは初めてだったが、それは僕にとって素敵な体験だった。彼女と一緒にいると僕は人生を一段階上にひっぱりあげられたような気がした。三ゲームを終えたところで――もちろん三ゲームめも彼女が圧勝した――僕の手の傷が少しうずきはじめたので我々はゲームを切りあげることにした。
「ごめんなさい。ビリヤードなんかに誘うんじゃなかったわね」とハツミさんはとても悪そうに言った。
「いいんですよ。たいした傷じゃないし、それに楽しかったです、すごく」と僕は言った。
帰り際にビリヤード場の経営者らしいやせた中年の女がハツミさんに「お姐さん、良い筋してるわね」と言った。「ありがとう」とにっこり笑ってハツミさんは言った。そして彼女がそこの勘定を払った。
「痛む?」と外に出てハツミさんが言った。
「それほど痛くはないです」と僕は言った。
「傷口開いちゃったかしら?」
「大丈夫ですよ、たぶん」
「どうだわ、うちにいらっしゃいよ。傷口見て、包帯とりかえてあげるから」とハツミさんが言った。「うち、ちゃんと包帯も消毒薬もあるし、すぐそこだから」
そんなに心配するほどのことじゃないし大丈夫だと僕は言ったが、彼女の方は傷口が開いていないかどうかちゃんと調べてみるべき
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