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第72章

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    第72章 (第2/3页)

日曜日かと思った。まるで四日に一回くらいのペースで日曜日がやってきているような気がした。そしてあと二回土曜日が来たら僕は二十歳になる。僕はベッドに寝転んで壁にかかったカレンダーを眺め、暗い気持になった。

    *

    日曜日の朝、僕はいつものように机に向って直子への手紙を書いた。大きなカップでコーヒーを飲み、マイルス?ディヴィスの古いレコードを聴きながら、長い手紙を書いた。窓の外には細い雨が降っていて、部屋の中は水族館みたいにひやりとしていた。衣裳箱から出してきたばかりの厚手のセーターには防虫剤の匂いが残っていた。窓ガラスの上の方にはむくむくと太った蠅が一匹とまったまま身動きひとつしなかった。日の丸の旗は風がないせいで元老院議員のトーガの裾みたいにくしゃっとボールに絡みついたままびくりとも動かなかった。どこかから中庭に入りこんできた気弱そうな顔つきのやせた茶色い犬が、花壇の花を片端からくんくんと嗅ぎまわっていた。いったい何の目的で雨の日に犬が花の匂いを嗅いでまわらねばならないのか、僕にはさっぱりわからなかった。

    僕は机に向って手紙を書き、ペンを持った右手の傷が痛んでくるとそんな雨の中庭の風景をぼんやりと眺めた。

    僕はまずレコード店で働いているときに手のひらを深く切ってしまったことを書き、土曜日の夜に、永沢さんとハツミさんと僕の三人で永沢さんの外交官試験合格の祝いのようなことをやったと書いた。そして僕はそこがどんな店で、どんな料理が出たかというのを説明した。料理はなかなかのものだったが、途中で雰囲気がいささかややこしいものになって云々と僕は書いた。

    僕はハツミさんとビリヤード場に行ったことに関連してキズキのことを書こうかどうか少し迷ったが、結局書くことにした。書くべきだという気がしたからだ。

    「僕はあの日――キズキが死んだ日――彼が最後に撞いたボールのことをはっきりと覚えています。それはずいぶんむずかしいクッションを必要とするボールで、僕はまさかそんなものがうまく行くと思わなかった。でも、たぶん何かの偶然によるものだとは思うのだけれど、そのショットは百パーセントぴったりと決まって、緑のフェルトの上で白いボールと赤いボールが音もたてないくらいそっとぶつかりあって、それが結局最終得点になったわけです。今でもありありと思い出せるくらい美しく印象的なショットでした。そしてそれ以来二年近く僕はビリヤードというものをやりませんでした。

    でもハツミさんとビリヤードをやったその夜、僕は最初の一ゲームが終るまでキズキのことを思い出しもしなかったし、そのことは僕としては少なからざるショッ

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