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第73章

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    第73章 (第2/3页)

とした白いステン?カラー?コートの下に黄色い薄いセーターを着て、ブルージーンズをはいていた。そして手首にはブレスレットを二本つけていた。

    「何飲んでるの?」と僕は訊いた。

    「トム?コリンズ」と緑は言った。

    僕はウィスキー?ソーダを注文してから、足もとに大きな革鞄が置いてあることに気づいた。

    「旅行に行ってたのよ。ついさっき戻ってきたところ」と彼女は言った。

    「どこに行ったの?」

    「奈良と青森」

    「一度に?」と僕はびっくりして訊いた。

    「まさか。いくら私が変ってるといっても奈良と青森に一度にいったりはしないわよ。べつべつに行ったのよ。二回にわけて。奈良には彼と行って、青森は一人でぶらっと行ってきたの」

    僕はウィスキー?ソーダをひとくち飲み、緑のくわえたマルボロにマッチで火をつけてやった。「いろいろと大変だった?お葬式とか、そういうの」

    「お葬式なんて楽なものよ。私たち馴れてるの。黒い着物着て神妙な顔して座ってれば、まわりの人がみんなで適当に事を進めてくれるの。親戚のおじさんとか近所の人とかね。勝手にお酒買ってきたり、おすし取ったり、慰めてくれたり、泣いたり、騒いだり、好きに形見わけしたり、気楽なものよ。あんなのピクニックと同じよ。来る日も来る日も看病にあけくれてたのに比べたら、ピクニックよ、もう。ぐったり疲れて涙も出やしないもの、お姉さんも私も。気が抜けて涙も出やしないのよ、本当に。でもそうするとね、まわりの人たちはあそこの娘たちは冷たい、涙も見せないってかげぐちきくの。私たちだから意地でも泣かないの。嘘泣きしようと思えばできるんだけど、絶対にやんないもの。しゃくだから。みんなが私たちの泣くことを期待してるから、余計に泣いてなんかやらないの。私とお姉さんはそういうところすごく気が合うの。性格はずいぶん違うけれど」

    緑はブレスレットをじゃらじゃらと鳴らしてウェイターを呼び、トム?コリンズのおかわりとピスタチオの皿を頼んだ。

    「お葬式が終ってみんな帰っちゃってから、私たち二人で明け方まで日本酒を飲んだの、一升五合くらい。そしてまわりの連中の悪口をかたっぱしから言ったの。あいつはアホだ、クソだ、疥癬病みの犬だ、豚だ、偽善者だ、盗っ人だって、そういうのずうっと言ってたのよ。すうっとしたわね」

    「だろうね」

    「そして酔払って布団に入ってぐっすり眠ったの。すごくよく寝たわねえ。途中で電話なんかかかってきて

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