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第82章 (第1/3页)
大人になるんだよ。そうしなくてはならないからだ。俺はこれまでできることなら十七や十八のままでいたいと思っていた。でも今はそうは思わない。俺はもう十代の少年じゃないんだよ。俺は責任というものを感じるんだ。なあキズキ、俺はもうお前と一緒にいた頃の俺じゃないんだよ。俺はもう二十歳になったんだよ。そして俺は生きつづけるための代償をきちっと払わなきゃならないんだよ。
「ねえ、どうしたのよ、ワタナベ君?」と緑は言った。「ずいぶんやせちゃったじゃない、あなた?」
「そうかな?」と僕は言った。
「やりすぎたんじゃない、その人妻の愛人と?」
僕は笑って首を振った。「去年の十月の始めから女と寝たことなんて一度もないよ」
緑はかすれた口笛を吹いた。「もう半年もあれやってないの?本当?」
「そうだよ」
「じゃあ、どうしてそんなにやせちゃったの?」
「大人になったからだよ」と僕は言った。
緑は僕の両肩を持って、じっと僕の目をのぞきこんだ。そしてしばらく顔をしかめて、やがてにっこり笑った。「本当だ。たしかに何か少し変ってるみたい、前に比べて」
「大人になったからだよ」
「あなたって最高ね。そういう考え方できるのって」と彼女は感心したように言った。「ごはん食べに行こう。おなか減っちゃったわ」
我々は文学部の裏手にある小さなレストランに行って食事をすることにした。僕はその日のランチの定食を注文し、彼女もそれでいいと言った。
「ねえ、ワタナベ君、怒ってる?」と緑が訊いた。
「何に対して?」
「つまり私が仕返しにずっと返事を書かなかったことに対して。そういうのっていけないことだと思う?あなたの方はきちんと謝ってきたのに?」
「僕の方が悪かったんだから仕方ないさ」と僕は言った。
「お姉さんはそういうのっていけないっていうの。あまりにも非寛容で、あまりにも子供じみてるって」
「でもそれでとにかくすっきりしたんだろう?仕返しして?」
「うん」
「じゃあそれでいいじゃないか」
「あなたって本当に寛容なのね」と緑は言った。「ねえ、ワタナベ君、本当にもう半年もセックスしてないの?」
「してないよ」と僕は言った。
「じゃあ、
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