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第83章

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    第83章 (第1/3页)

僕は今年もまた大学に戻れなかった直子のことを思った。窓際にはアネモネの花をさした小さなグラスが置いてあった。

    女の子たち二人がじゃあねと言って自分たちのテーブルに戻ってしまうと、緑と僕は店を出て二人で町を散歩した。古本屋をまわって本を何冊か買い、また喫茶店に入ってコーヒーを飲み、ゲーム?センターでピンボールをやり、公園のベンチに座って話をした。だいたいは緑がじゃべり、僕はうんうんと返事をしていた。喉が乾いたと緑が言って、僕は近所の菓子屋でコーラをニ本買ってきた。そのあいだ彼女はレポート用紙にボールペンでこりこりと何かを書きつけていた。なんだいと僕は聴くと、なんでもないわよと彼女は答えた。

    三時半になると彼女は私そろそろ行かなきゃ、お姉さんと銀座で待ち合わせしてるの、と言った。我々は地下鉄の駅まで歩いて、そこで別れた。別れ際に緑は僕のコートのポッケトに四つに折ったレポート用紙をつっこんだ。そして家に帰ってから読んでくれと言った。僕はそれを電車の中で読んだ。

    「前略。

    今あなたがコーラを買いに行ってて、そのあいだにこの手紙を書いています。ベンチの隣りに座っている人に向って手紙を書くなんて私としてもはじめてのことです。でもそうでもしないことには私の言わんとすることはあなたに伝わりそうもありませんから。だって私が何が言ってもほとんど聞いてないんだもの。そうでしょう?

    ねえ、知ってますか?あなたは今日私にすごくひどいことしたのよ。あなたは私の髪型が変っていたことにすら気がつかなかったでしょう?私少しずつ苦労して髪をのばしてやっと先週の終りになんとか女の子らしい髪型に変えることができたのよ。あなたそれにすら気がつかなかったでしょう?なかなか可愛くきまったから久しぶりに会って驚かそうと思ったのに、気がつきもしないなんて、それはあまりじゃないですか?どうせあなたが私がどんな服着てたかも思いだせないんじゃないかしら。私だって女の子よ。いくら考え事をしているからといっても、少しくらいきちんと私のことを見てくれたっていいでしょう。たったひとこと『その髪、可愛いね』とでも言ってくれれば、そのあと何してたってどれだけ考えごとしてたって、私あなたのことを許したのに。

    だから今あなたに嘘をつきます。お姉さんと銀座で待ち合わせているなんて嘘です。私は今日あなたの家に泊るつもりでパジャマまで持ってきたんです。そう、私のバッグの中にはパジャマと歯ブラシが入っているのです。ははは、馬鹿みたい。だってあなたは家においでよとも誘ってくれないんだもの。でもまあいいや、あなたは私のことなんかどうでもよくて

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