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第92章

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    「そんなことないですよ。直子だって誰かに着てもらっている方が嬉しいと思いますね。とくにレイコさんに」

    「不思議なのよ」とレイコさんは言って小さな音で指を鳴らした。「直子は誰にあてても遺書を書かなかったんだけど、洋服のことだけはちゃんと書き残していったのよ。メモ用紙に一行だけ走り書きして、それが机の上に置いてあったの。『洋服は全部レイコさんにあげて下さい』って。変な子だと思わない?自分がこれから死のうと思ってるときにどうして洋服のことなんか考えるのかしらね。そんなのどうだっていいじゃない。もっと他に言いたいことは山ほどあったはずなのに」

    「何もなかったのかもしれませんよ」

    レイコさんは煙草をふかしながらしばらく物思いに耽っていた。「ねえ、あなた、最初からひとつ話を聞きたいでしょう?」

    「話して下さい」と僕は言った。

    「病院での検査の結果がわかって、直子の病状は一応今のところ回復しているけれど今のうちに根本的に集中治療しておいた方があとあとのために良いだろうってことになって、直子はもう少し長期的にその大阪の病院に移ることになったの。そこまではたしか手紙に書いたわよね。たしか八月の十日前後に出したと思ったけど」

    「その手紙は読みました」

    「八月二十四日に直子のお母さんから電話がかかってきて、直子が一度そちらに行きたいと言っているのだが構わないだろかと言うの。自分で荷物も整理したいし、私とも当分会えないから一度ゆっくり話もしたいし、できたら一泊くらいできないかっていうことなの。私の方は全然かまいませよって言ったの。私も直子にはすごく会いたかったし、話したかったし。それで翌日の二十五日に彼女はお母さんと二人でタクシーに乗ってやってきたの。そして私たち三人で荷物の整理をしたわけ。いろいろ世間話をしながら。夕方近くになると直子はお母さんにもう帰っていいわよ、あと大丈夫だからって言って、それでお母さんはタクシーを呼んでもらって帰っていったの。直子はすごく元気そうだったし、私もお母さんもそのとき全然気にもしなかったのよ。本当はそれまで私はすごく心配してたのよ。彼女はすごく落ちこんでがっくりしてやつれてるんじゃないかなって。だてああいう病院の検査とか治療ってずいぶん消耗するものだってことを私はよく知ってるからね、それで大丈夫かなあって心配してたわけ。でも私ひと目見て、ああこれならいいやって思ったの。顔つきも思ったより健康そうだったし、にこにこして冗談なんかも言ってたし、しゃべり方も前よりずっとまともになってたし、美容院に行ったん

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