第92章 (第2/3页)
だって新しい髪型を自慢してたし、まあこれならお母さんがいなくて私と二人でも心配ないだろうって思ったわけ。ねえレイコさん、私この際だから病院できちんと全部なおしゃおうと思うのっていうから、そうね、それがいいかもしれないわねと私も言ったの。それで私たち外を二人で散歩していろんなお話をしたの。これからどうするだの、そんないろんな話ね。彼女こんなこと言ったわ。二人でここを出られて、一緒に暮らすことができたらいいでしょうねって」
「レイコさんと二人でですか?」
「そうよ」とレイコさんは言って肩を小さくすぼめた。「それで私言ったのよ。私はべつにかまわないけど、ワタナベ君のこといいのって。すると彼女こう言ったの、『あの人のことは私きちんとするから』って。それだけ。そして私と二人でどこに住もうだの、どんなことしようだのといったようなこと話したの。それから鳥小屋に行って鳥と遊んで」
僕は冷蔵庫からビールを出して飲んだ。レイコさんはまた煙草に火をつけ、猫は彼女の膝の上でぐっすりと眠りこんでいた。
「あの子もう始めから全部しっかりと決めていたのよ。だからきっとあんなに元気でにこにこして健康そうだったのね。きっと決めちゃって、気が楽になってたのよね。それから部屋の中のいろんなものを整理して、いらないものを庭のドラム缶に入れて焼いたの。日記がわりしていたノートだとか手紙だとか、そういうのみんな。あなたの手紙もよ。それで私変だなと思ってどうして焼いちゃうのよって訊いたの。だってあの子、あなたの手紙はそれまでずっと、とても大事に保管してよく読みかえしてたんだもの。そしたら『これまでのものは全部処分して、これから新しく生まれ変わるの』って言うから、私はふうん、そういうものかなってわりに単純に納得しちゃったの。まあ筋はとおってるじゃない、それなりに。そしてこの子も元気になって幸せになれるといいのにな、と思ったの。だってその日直子は本当に可愛いかったのよ。あなたに見せたいくらい。
それから私たちいつものように食堂で夕ごはん食べて、お風呂入って、それからとっておきの上等のワインあけて二人で飲んで、私がギターを弾いたの。例によってビートルス。『ノルウェイの森』とか『ミシェル』とか、あの子の好きなやつ。そして私たちけっこう気持良くなっって、電気消して、適当に服脱いで、ベットに寝転んでたの。すごく暑い夜でね、窓を開けてても風なんて殆んど入ってきやしないの。外はもう墨で塗りつぶされたみたいに真っ暗でね、虫の音がやたら大きく聞こえてたわ。部屋の中までムっとする夏草の匂いでいっばで。それから急にあなたの話を直子が始めたの。あなたとのセックスの話よ。そ
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